RIDER NOTES

BC-ZR750C乗りの残しておきたいログ

北総|1.犬吠埼

 その週末、大阪からツレが来る予定だったのだが、前日の朝になっていきなりキャンセル。それならと元同僚に声をかけて、魔都天一ツアーとシャレこもうぜということになったのだが、こともあろうか当日(土曜)の朝にキャンセルのメール。

 よーし、こうやったらヤケクソや! とばかりにそそくさとツーリングの支度を済ませ、四郎の後ろによっこらしょと積み込み、いざ行かん。

 行き先は……なんも決めてなかった! んやけど、最近(というか去年魔都に来てから)西の方ばっかし行ってるから、とりあえず今回は東にでも行ってみっかー。

 ということで、もう9時前だったにもかかわらずにしゅっぱ~つ♪ ま、今日はどっかでテント張って寝たらええか…という非常に気楽なツーリングである。R16から第一京浜(R15)をちんたら走行。 なぜ「バビューン」ではないのか。

 それは、「春の全国交通安全運動用運転」なのである。詳しくは省略するが、まぁそういうことだ。しかたがない。多少ストレスは溜まるものの、とっ捕まってアレコレ言われた挙句に罰金では、せっかくのツーリングも台無し。

 とりあえず第一関門の第一京浜を銀座で右折し、その後、晴海通りから第二関門である湾岸道路(R357)にスイッチ。幸い…というべきか、湾岸道路もそこそこ混んでいたので、ぶっ飛ばすこともなく悶々としながら進む。(四郎号千葉初上陸♪)「東金・佐倉はコッチ←」の標識に従って湾岸道路から一旦R14に入り、すぐのところにあったコンビニで初休憩。

 しかし暑い…。店の中にトイレを借りに入ると、どことなくひ~んやり……もう冷房かよ。それもそのはず。その後、道のところどころにあった電光掲示板によると、「今日の気温 22℃」。そら暑いはずだわ。

 千葉市内からすぐにR126(成田街道)に入り、車の流れのままちんたら進み(ここでも交通安全運動対策運転炸裂)、東金市街を越えると国道の両脇にはおそろしいほどの田園地帯が……

 見渡す限りの田んぼ田んぼ田んぼ。それらが陽光を水面で砕けさせ、キラキラと輝くのが国道からもよ~くわかるくらい。僕が求めてたのは、こーゆー風景やねん。ビバ! 千葉! 千葉生まれを今日ほど光栄に思ったことはないぞ。魔都といえば味気のない風景の中を走るしかないわけですわ。

 いかに「田園風景」とか「のどかな田舎」を求めているか、わかっていただけるだろうか。R126も東金を過ぎると山武市。そこであたり一面の田園界に別れを告げ、九十九里浜を求めて県道58号線へ。

 用も無事済ませてから、ふと道の駅の裏手を見てみると、右も

 左も

 どこ行っても田んぼですか?

 県道58号線(芝山はにわ線)のつきあたりを九十九里と平行して走るのは県道30号線。通称・九十九里ビーチライン。もう気分は九十九里のトビウオで。どういうこと。

 海水浴シーズンならいざ知らず、この時期は車がほとんどおらず、それでもどこでネズミ捕りをやってるかわからんので、おとなしく快走。ぽかぽか陽気の中、九十九里ビーチラインを気持ちよく走れているという、なんていうかなー、感触みたいなものがたまらん。

 九十九里に星の数ほどある海水浴場であれば、今はオフシーズンなんやから、ひと気のないビーチでゆっくり昼飯が食える。

 蓮沼海浜公園はメジャーすぎて却下である。蓮沼から北上すること数分したら、「ようこそ堀川浜海水浴場へ」というちっちゃい手書き看板が。一旦通り過ぎたんですが、すぐ引き返してその小さい交差点から海の方へ向けて進むと駐車場には車がたくさん。

 何事かと思いきや、全部サーファーの方たちやったんですな。みなさん、それぞれグループで談笑しながら準備をしたり帰る支度をしたりしてました。 今さら別の海水浴場にするのもじゃまくさかった(どこにいってもおそらくほぼ変わらない状況だった)んで、とりあえず駐車場の片隅に四郎号を止めて昼飯を持ち、海へと歩いてみると、

 こりゃええわ…。風が少しあったのだが、今日の昼飯はココ! ほんまはだ~れもおらん海で一人で食いたかったんやけど、まぁええやろ。波打ち際で遊ぶ1~2組の家族連れもいたりして、春の休日を思い思いに過ごす風景もええもんや。

 それにしても、普段大阪湾のおだやか~な海ばかりを見てる僕には、九十九里の波の大きさにびっくり。これがほんまの太平洋なんやなぁ…と思いながらも、昼飯はあっという間に終わってしもた。

 四郎号に再び跨り、九十九里ビーチラインをそのまま北上。R126に再び合流した直後に、「刑部岬展望館こっち→」の看板があったので、発作的に右折 ( ゚Д゚)ウォリャー!! すると、高台の上にぽつねんと現れた、みょーにキレイな施設が。そこが「飯岡刑部岬展望館」。

maruchiba.jp

 ライダーは「先っぽ好き」とよく言われますが、案の定バイクもすでに3台おりました。車もまずまず。早速展望台に上って眺めてみると、遠くに、ぐにゅ~~~~んと九十九里が続いているのがわかりますなー。さっき昼飯を食った堀川浜ってどこへんやろ。 すぐ足元に見えるのは飯岡漁港。細かく見てると、人や車や自転車らがちまちま動いてて、生活を感じられる。

 あとでツーリングマップルを見ると、この展望館も載ってて、「雄大屏風ヶ浦九十九里浜を同時に見ることができる」と書かれていましたが、どっちを見ても屏風ヶ浦は見えへんかったなぁ。ま、屏風ヶ浦は見たことはあるから、まぁいいか。

 R126に戻ってくねくね進むと、犬吠埼へ続く県道286号線へスイッチ。

 この県道286号線ですが、この道はよろしいで~。短いながらも直線が続き、おまけにアップダウンも適度にあって「ぷち北海道」を味わえます。地元の近くにも紀ノ川広域農道っちゅーのがありましてですね。ここもまたアップしてダウンしてアップしてダウンして、ぐにゅ~~んと直線! みたいな道なんですが、唯一の欠点はネズミ捕りが非常に多いということを経験則にて得ているので、「速度はほどほど」の交通安全運動対策運転は欠かしません。ってか、飛ばすのがもったいない。

 そのまま標識にしたがって進むと、見覚えのあるようなないような犬吠埼が見えてくる。 正面にあるはずの灯台がなかなか見えず、立ち並ぶ土産物屋さんと、その前に路駐している車とぐちゃぐちゃに歩く観光客と帰る車でごっちゃごちゃの中をどうにか進むと、ようやく灯台が見え、その足元にある遊歩道の隅っこにはすでに何台ものバイクが。 その中に四郎号を止めました。

 久しぶりの犬吠埼灯台! でもてっぺんから万国旗を張っちゃって、どこかオメカシているもよう。

ナニナニ……。「海上保安の日特別公開」?  壁の中に入っていく観光客を、制服姿のおっちゃん数名がお出迎え。

bar「あのぅ……」
おっちゃん「はいはい」(にこにこ)
bar「料金は……」

 料金所が閉まっているのだ。

おっちゃん「あ。今日は無料なんです」
bar「え。そうなんですか。ラッキー♪」
おっちゃん「ええ。今日は昭和23年に海上保安庁運輸省(当時)の外局として開庁された記念日なんです」

 海上保安庁?! ( ゚д゚)ナヌッ!!

bar「そうなんですか! ということは、ここらは第三管区ですね」
おっちゃん「よくご存知ですね」
bar「『海猿』ファンとしては常識ですね」
おっちゃん 「は?」 ( ゚д゚)?

 みたいな会話をかましつつ、早速灯台を昇るぞ。

 ところが、なんと階段の足元には、

 ……orz  こんなんあったっけ?! うーむ…。

 そして昇っていくほどに、メッセージが現れます。以下をご参照ください。

 ↓

 ↓

 ↓

 ↓

 途中で写真がブレてる? そうです。膝ががくがくしてたからです。

 そして、「九十九里」にちなんだ99段の階段を完遂し、制覇しました犬吠埼灯台。上からの眺めもさすがは「本土一早く日の出が拝める地」の眺め。

(真正面。レーダーがぴろぴろしてます。ガンバレ海上保安庁!)

鹿島灘方面を望む。こちらは君ヶ浜という海岸)

 人でいっぱいの(とはいっても狭いから人数的にはさほどではないんですが)てっぺんをぐるっと一周して、ふと下を見下ろすと、先ほどバイクを止めた灯台の入り口が見える。

 ここで時刻は2時半。今日の寝床を探索するにはまだまだ早いのだが、実は今回のキャンプツーリングには、大きな目的があった。 それはテントを張ることである。

 というのは当然なんですが、実は……僕のテントって、ここ5年近く使ってないんです。

 おまけに前回使った際に、ちゃんと湿気をとってしまったかどうか、ペグ(テントを地面に固定するもの)がちゃんとあるのかどうかもさっぱり覚えてないまま地元から持参してきたもの。出かける前に一回広げて確かめてみるとかすりゃよかったんですが、そんなんするわけあらへん。

 こわいからである。

 ペグがないくらいやったらどーにかなる(天候による)んですが、湿気そのままで袋にしまったとすればカビでえらいことになってるのは想像に難くない。カビまでいかなくとも、強烈な匂い。強烈とまではいかなくとも、ほんのりと匂いがあったりすると、それだけでひと晩を過ごすのは厳しくなってくる……。

 そんなテントを事前に広げてみる気になりますか?! ( ゚Д゚)ハァ? ……というわけで、今回のキャンプツーは、ある意味ばくちなわけであります。せやから、できれば明るいうちにテントを張って確認しておきたい……というのが本音。 ふと四郎号を置いたあたりを見てみると、

 テントの張れそうなところばかりに目がいきますな。よし! ここはいっちょ、モノは試しにテントを張れるかどうかを聞いてみよう! と思い、そそくさと地上へ。

 広場には海上保安庁のものとおぼしきレーダーみたいな鉄柱が立っているから、さっきの海上保安庁のおっちゃんに聞いてみようと思った。

bar「すみません!!」
おっちゃん「あ、さっきの方。どうでした? 上からの眺めは」
bar 「サイコーですね! さすがは海上保安庁!」
おっちゃん「はぁ…まぁ、よかったです」
bar「海上保安庁がこのように歴史ある灯台を舞台に活躍されてるのがよくわかりましたよ~」
おっちゃん 「そ、そうですか…灯台が舞台ではないんですけど…」
bar 「いや~。さすがは第三管区!!!」
おっちゃん 「はぁ……」
bar「『海猿』で人気が出る前から、こういう地道な海保の方々の活躍で、海に囲まれた我が国の安全が保たれているわけですもんね!」
おっちゃん「まぁそれはそうですね….ありがとうございます」
bar「ところでですねぇ」
おっちゃん「なんでしょう?」
bar「(指差しながら)そこらへんって、芝生の広場みたいになってるやないですかぁ…」
おっちゃん「そうですね」
bar「ここにテントとか張って泊まったりしてもええもんですかねぇ」
おっちゃん「ダメですっ!!!!!」

 ちぇっ。

 しかたあるまい。ここは素直に諦めて、僕は四郎に再び跨り、とりあえず銚子駅の方からR356(銚子大橋)方面に抜けるため、君ヶ浜の前を通って県道をバビューンと進んだのである。まではよかったんですが、途中でどこをどう間違えたのか、どこを走ってるのかさっぱりわからなくなり、何やら学校の前やら住宅街やらをぐるぐる回っていくうちに元来た道に戻ってきてしもた。

 んで、おとなしくいったん灯台まで戻り、そこから国道に出るか…と思ったら、「銚子駅コッチ→」という看板を発見したのでそのままタクシーにくっついて走ると、ほどなくして銚子大橋のたもとまで出れました。ふぅ……実は海上保安庁の方に「ダメっ」と言われてから、灯台を出発する前にツーリングマップルとにらめっこしておったんです。

 どこにテントを張るにしても、この時間(午後3時)からあてすっぽうに走り出しても墓穴を掘るだけ。とりあえず見当をつけておかねばならん…… とツーリングマップルをぱらぱらとめくっていると、なんと利根川を越えたところには、湖面積日本第二位を誇る霞ヶ浦があるではないか。そしてその湖畔の近いところにちっちゃくキャンプ場のマーク。

 距離的にもここから1時間半といったところ。よっしゃ! とりあえず照準を合わせ、一路R356をひた走ることにしたのである。R356は別名「利根水郷ライン」なんですが、坂東太郎と言われた利根川が見えるのはわずか。車の流れはまずまずですが、快走路というにはあまりにも程遠い道でした 。

 そのうち道は香取市へ。

 小見川大橋をやり過ごして佐原で水郷大橋(R51)を北上すると、そこはもう茨城県!(四郎号茨城県初上陸) 稲敷市に入ってR51から広域農道に入ると、もうそこは、どこまでも続く水田。千葉といい茨城といい……

(グッジョブ!)

 国道や主要県道なんかは、もう今は全国どこにいってもちゃんと舗装されてるし、その沿線には駐車場を完備した、いわゆる「郊外型店舗」と呼ばれるおっきなお店が並んだりしてるけど、一本外れるとまだまだこんな風景が残ってるんですね。

 日本もまだまだ捨てたもんじゃあらへん。 広域農道から湖畔を辿る細い道に入ると、もうそこには霞ヶ浦が大きく横たわって、湖面に日の光を砕け輝かせていたのである。 その道のつきあたりにあるのが、今回目指した和田(浮島)公園キャンプ場。駐車場にはすでに4~5台のバイクと10台ほどの車が止まっていたので、すぐにわかった。とりあえず管理棟に詳細を尋ねようと歩いて公園の中に進むと、それらしき建物はどこにもなさそう。

 広い広場にはファミリーキャンパーのも含めて5~6個のテントやタープが張られていて、すっかり傾いたやわらかい陽光の中で、子供たちのかわいらしい歓声も聞こえたりしている。 しかたないので、一番近いところですでにテントを張り終え、タープをとんてんかんとやっていたお兄さんに声をかけてみる。

bar「すみませーん」
お兄さん「はい?」
bar「ここって、予約かなんかがいるキャンプ場なんですか?」
お兄さん「はい。必要です」

 げ。

bar「……そうですか……」
お兄さん「事前に市役所に連絡を入れておくだけなんですけどね」
bar「そうですか…。今日は土曜日ですから、開いてませんよねぇ…」
お兄さん「関西の方…?」
bar「そうですー」
お兄さん「まぁ市役所に電話一本入れるだけでいいんですけどね」
bar「はぁ….」
お兄さん「でもまぁ、わざわざ大阪から来られたことですし」
bar「あ、あのぅ、僕、大阪から来たってわけでも……」
お兄さん「まぁまぁ。ここは無料ですよ」
bar「マジっすか!」
お兄さん「でも、ごみは全部持ち帰りです」
bar「はぁ」
お兄さん「それから、直火は禁止です」
bar「はぁ」
お兄さん「ごみは必ず持って帰ってくださいね。ごみを残すと、ここが使えなくなっちゃいますから」
bar「は、はい…」
お兄さん「では、よろしくお願いいたします」

 お兄さん、あなたは市役所勤務ですか?

 なんだかわからなかったが、お兄さんに許可をもらった僕は早速荷物を四郎号まで取りに行き、えっちらおっちらと運び、場所を選定。近くにいた方々にご挨拶をしてから、約5年ぶりのテントをおそるおそる広げてみると……

 無事でした! 心配していたカビはおろか 覚悟していた匂いもまったく無しっ!!! まぁ元々安いテント(ホームセンターで3~4000円!!)やったから、5年も使わないで置きっぱなしにしておいたらどないになってんかと思ったんですが、いたってフツー。まるで先週も使いました的な雰囲気すら漂う風情に、風格すら感じてしまい、やや皺がよってましたが、それでも愛着が湧いてきたりして。

 地面はペグ(こちらもちゃんと本数アリ)が手でしっかりさせるほどの固さで、これで無料とは……。おそるべし稲敷市

 テントを張り終えてテーブルやら椅子やらを出したところでまだまだ陽は沈みかけているわけでもなく、メシを作るには早かったので、松の木の向こうに見える霞ヶ浦を見に行くことに。霞ヶ浦は波一つなくどこまでも穏やかで、はるか向こうに対岸が霞んで見える。こういうところを見るにつけ、昔の人にとったら果てしなく続く海のような感覚やったんやろなぁ…と思うわけです。

 焚き火用の小枝や松ぼっくりを集めたり、他の方々のテントやタープの種類やレイアウトを観察したりしているうちにだんだんと陽も傾いてくる。 あたりにも少しずつ闇が漂ってきた。気温は全然下がらない。他の方々もメンバーが集まってきて焚き火を炊いたりメシのしたくをし始めている。

 今回用意した調理具は、コッフェルとスプーンだけ。いつもの飯盒もなければ、ナイフやまな板も持ってきてへんのです。なぜなら今回には数々の秘密兵器があるからなのである。

 まずはおもむろに持参した水をストーブで沸かしてデスねぇ…そして

 そう。インスタントなアルファ米。沸かしたお湯を注いで20~30分待つだけ。これは家で非常用に備蓄していたやつなんやけど、保存期限の5年が来年1月で過ぎてしまうので、しかたなく魔都に持ってきたものなのでアル! そしておかずは、

 と、

 このあたり全くこだわり無し。もうね。一人でアレコレ調理するのがじゃまくさいんです。たかが一晩のサバイバルごっこやもん。お店が近くにあるんやったら、そこのご飯でもオッケーくらいに思ってしまうわけですわ。ってわけで、オールレトルトの晩飯はあっという間に完成♪(親子丼はアルファ米の袋にそのままぶち込み)

 しかしアレですな。この親子丼は5つくらいあって、このツーリングに出る前にそのうちの1つを家で食ってみたんですが、まずいのなんの….。それがこんなところで食ってみると、あら不思議。これがまたおいしくなるんですなぁ。これが外メシの醍醐味と申しましょうか…。改めてその威力に感じ入ったわけです。

 メシが終わって暮れていく中、集めた松の小枝や松ぼっくりで焚き火をかましつつ、ヘッドランプの丸い明かりの中でツーリングマップルを見ながら、翌日の予定を立ててみたりする。

 9時には眠くなってきたので、よそのグループや家族がまだまだ談笑してはる中、そそくさとテントの中に広げておいたシュラフに潜り込んで、いつのまにか眠ってしまっていたのでした。

(つづく)