rider notes

BC-ZR750C乗りの残しておきたいログ

山陰|7.経ヶ岬灯台

 「←経ヶ岬灯台アッチ!」の案内が見えてぐいぐいと坂を上っていったら、そこが駐車場。すでに10台ほどの車とバイクが2台。

 灯台に行く前にまずは海を拝もうと奥に進んでみたら、

げっ

 大勢のカメラ愛好家。過去の経験からいえばこういう方々はとっても気難しいことが多く、「何を撮ってるんですかー?」などと気軽に話しかけようものなら、「はっ?! おまえ気安く声かけんじゃねーよ!」みたいな顔をされることが多々。触らぬ神に祟りなし、とはこういうときに使うのだ。

 きっと灯台のきれいな風景を撮ってるんだろうなと思ってなにげなくカメラの向いている先を見ても灯台がくっきり見えるわけではない。よくよく見ればカメラが向いている角度がどうも灯台よりもはるか下あたりだ。何を狙ってるんだろうナァと思いつつその場から立ち去ろうとすると、

 「自由に見てください」「ハヤブサが止まっています」

 ほんまかいなと怪訝そうに足を止めていたぼくの近くにいたおっちゃんが、

 「是非、覗いてください。今も止まっているのが見えると思いますよ」

 と笑顔。覗いた瞬間に「うそじゃボケーッ」と後頭部をどつかれるんじゃないかとヒヤヒヤしながらおそるおそるレンズを覗いてみると、ホントにいた! ハヤブサが太めの木の枝に止まって微動だにせず荒海を望んでいる。カッコいい!

 っていうかおっちゃん優しいやん。ぼくの後ろにいたご夫婦も望遠鏡を覗いて「おー!」って喜んでたし。どついてくるとか疑ってごめんよおっちゃん。

 灯台へは駐車場から15分ほど歩かねばならないのだが、山陰海岸のゴールを飾るためにここは一発行っておかねばなるまいと鼻息も荒く駐車場の奥から出発したものの、すんげー階段をずーっと上っていかねばならないという修行モード。

 えっちらおっちら15分ほど歩くと見えてきました経ヶ岬灯台

 そんなに大きな灯台ではなく、中にも入れないのだが、灯台のご多分に漏れずそこからの眺めは絶景。

 そうかぁ…ここで山陰海岸も終わりなんだなぁ…と思うとちょっと感慨深かった。

 昨日から走って見てきた山陰海岸は、確かに日本海の形成過程で太平洋とは全く異なる様相を呈することになったが、決して陰鬱ではなかった。なんなら晴天の爽快な下で奇岩もあり砂浜もあり、いろんな表情を見せてくれて楽しめたくらいだ。

 さっきのカメラ愛好家の方々に対してもそうだ。同じようなことは普段の生活にもある。そもそもアテにならない自分の勝手な先入観にどれほどの価値があるというのだろう……とぼくは改めて認識を新たにしたのである。

 というのは全くのだが、帰り道でこれから灯台に向かう観光客の方々とすれ違い、その中で道を譲った年配の御婦人から息も絶え絶えに「あとどのくらいありますか?」と聞かれたのだった。

 正直は美徳である。その地点ではおそらく「あと半分と少し(つまり6割ほど)はある」というところだった。しかし、あと100mならがんばれるけどワタクシそれ以上はもう無理なのお願いだからあと少しだと言ってちょーだい……みたいな顔をした上品そうな御婦人に正直に伝えていいものかどうか、ぼくは一瞬迷った。その御婦人がショックを受けないように「もう少しです」と答えると嘘になる。そんな地点だったのだ。

 嘘にならない範囲でなるべく正直に……。結局、「あと半分です。灯台からの眺めは癒やされますよ。ニコッ」と答えておいた。正解ではないだろうが、不正解にもならずに済んだかな。

 駐車場に戻ったら車は満車状態。バイクも10台は止まっていてびっくりした。いいタイミングに来ててよかった。

 ここで今回の山陰海岸ツーリングはその目的を達成したといえる。でもせっかく丹後半島の北端まで来たんだもの。かいた汗を手ぬぐいで拭きつつツーリングマップルを見ながら、せっかくだし海際をぐるーっと回って久しぶりに伊根にでも行ってみるかと思い立つ。

 伊根にはこのままR178をひたすら進めばツーリングマップルで目測30分といったところ。その道中の景色も、今までに勝るとも劣らない絶景続きだ。さすが丹後半島

 伊根町という標識を見ると、ホントにあっという間に到着することとなる。

 目指すは道の駅だ。

(つづく)