rider notes

BC-ZR750C乗りの残しておきたいログ

播州|1.姫路

プロローグ

 ここんところ雨がちな関西地方。Tちゃんとのツーリングを予定していた2月27日も週間予報では降水確率90%。

Tちゃん「ご安心ください。僕の善行で晴れるはずです」

 善行…。僕には最も縁のない言葉であるが、細木数子を崇拝するTちゃんの好きな言葉でもある。いくら週間予報がアテにはならないとはいえ、降水確率90%の予報にも屈することなく晴れると豪語するTちゃん…。でも悪いけど晴れるとは思えないな…。僕は半分以上諦めていた。

 ところが、日が迫ってくるごとに降水確率は徐々に下がり、なんと2日前には20%。そして、前日には0%ホントに「善行」はあるのか?! そんなに細木数子ってスゴイのか?! ……いや、ひょっとしたら……Tちゃんが細木数子なのか?! 本気でちらりと思ってしまった。

集合

 当日、朝起きると曇り空。まぁ0%で雨が降ることはないだろうが、強烈にさぶい…。阪神高速湾岸線北行きにある中島PAに7時集合ということで、僕は猛烈な横風に耐えながら7時12分着。Tちゃんの新しい愛車、CBR600RR二輪車置き場に燦然と光り輝いていた。

 そう。TちゃんはCB400SFが車検を迎え、それなら…とCBR600RR勢いだけで買ってしまった。他にも車を2台、バイクも元々マジェスティも持っていて、これを本人は「12輪生活」と呼んでいる。Tちゃんとはそーゆーヤツなのである。

bar「しかし間近に見ると、いかついなー」

 とか言う僕も、実は「あげると言われたら真っ先に欲しいバイク№1」に輝くのは、何を隠そうCBR600RRである。

Tちゃん「いやー、待ちましたよ~」
bar「ホンマに悪かったよ。ところでTちゃんは何時に着いたん?」
Tちゃん「6時半です」
bar「ろ、6時半っ?!」
Tちゃん「今日に備えて早く寝たのはよかったんですが、夜中の1時に目が覚めたら眠れなかったもんで、ずーっとゲームしてました」
bar「で、結局何時に寝たの?」
Tちゃん「結局寝れなくて、そのままずっとゲームして起きてました」

 まるで遠足前日の幼稚園児である。

バイパスへ

 さて、僕はTちゃんに前を走ってもらうことにして、僕たちはさぶいさぶいと呟きながらも中島PAを出発。なぜTちゃんに前に行ってもらったか。それはTちゃんの駆って疾走するCBR600RRの姿を見て堪能するためである。断っておくがCBR600RRで疾走するTちゃんの姿を堪能するためではない。

 湾岸線から姫路方面に抜けるには、湾岸線からハーバーハイウェイ(二輪無料)に入り、京橋から阪神高速3号神戸線に乗り継いで、そのまま第2神明(二輪合計300円)~加古川バイパス~姫路バイパスと行くのが一般的。その前に実は僕もTちゃんも出だしから「ガソリンが足りん」という状態だったので、神戸線に乗り換える京橋ICの手前に運良くあったGSで給油を済ませることにした。

 いっこうに出る気配のない太陽を心待ちにしながら、僕たちは3号神戸線~第2神明へ。1個目の休憩ポイントである寒々とした明石SAに入ったのが8時20分頃だった。

bar「腹減った…」
Tちゃん「僕は朝メシ食ってきましたから、まだいいです」
bar「じゃぁ寒いし月見そばでも食うかな…。で、朝メシって何時に食ったの?」
Tちゃん「4時です」
bar「明らかに時間感覚が狂ってるよ…」

 とっとと食事を済ませ、再び第2神明へ。あとはそのまま加古川バイパス~姫路バイパスと乗り継いで進む。だけど第2神明といい加古川バイパスといい姫路バイパスといい、どーも昔から好きになれないなー。道といい景色といい車の量といい、あまりいいところがないように思えてしまう。

いざ姫路城へ

 そんなこんなでとりあえずわけのわからないまま姫路東ICで降り、R312を北上。R2手前にあったローソンで休憩がてら道を確認してみた。

 姫路城は午前9時から開いているらしい。この時点で時刻は9時半。

Tちゃん「ちょーどいいじゃないッスか」

 僕たちは車がわんさか溢れたR2を西進し、姫路城の大手前駐車場へ。ところが入口看板には「二輪車は止められませんぜ」 という但し書き。せっかくちゃんと駐車場に止めてやろうってーのに…。そこをなんとか…と交渉するために、駐車場の入口に陣取るおっさんに突撃。

bar「あのぅ、バイクは置かせてもらえないですか?」
おっさん「無理」
bar「なんとかならないッスか。お金もちゃんと払いますし…」
おっさん「無理」
bar「そこをなんとか…端っこの方に置かせてもらうだけで……」
おっさん「無理」
bar「じゃぁバイクはどこに止めたらええんですか?」
おっさん「駅前に行ったらある」
bar「駅前? 駅前て…」
おっさん「JRの姫路駅」

 姫路駅てゆーたら、ここから1キロはありまっせ…。

 待っていたTちゃんのところに戻った。

Tちゃん「どーでした?」
bar「久々に日本語が通じへんヤツと出会ったわ。しかたない。路駐しよか」

 常識派と知られるTちゃんでさえ「姫路駅?!」と驚き、「なぜ車だけが城の前の駐車場に止めれて、バイクは15分も20分も歩かなきゃならんのですか!」と怒り、僕たちは姫路市に対して抗議の意味を込めて路駐することにした。

姫路城

 そこから少し離れたところに見えるでっかい門。

Tちゃん「あれが大手門に違いありません」(きっぱり)
bar「そーなの? 大手門てなぁに?」
Tちゃん「いや、そ、それは、そのぅ…」

 知らんのかーい。

 そこをくぐり、見えてきました白亜の要塞・姫路城!

www.city.himeji.lg.jp

 Tちゃんの必殺技「JAFカードの術」も、ここ世界文化遺産の前では効果を発揮することができず、入場料600円也。入ってすぐにある城内順路を説明した看板によると、「一般コース」と「天守閣直行コース」とに分かれている。

bar「天守閣直行コースに決まりぃ~」

 元気よく歩き出したはいいのだが、「天守閣直行コース」とはいえなかなか歩きますぞ…。しかし、その間Tちゃんの歴史講座をいろいろ聞けたのでよかったとしよう。

Tちゃん「姫路城のことなら任せてください」
bar「姫路城マニアなの?」
Tちゃん「そんなマニアいたら僕が会いたいです」
bar「それ言えてるかも」
Tちゃん「でしょ? …じゃなくて!」
bar「じゃぁなんなのさ」
Tちゃん「姫路城を建てたのは誰でしょう?」
bar「唐突だねぇ」
Tちゃん「あ。大工さんとか答えてツーレポのネタにするのはやめてください」
bar「いくらなんでもそんなベタなことは言わないよ」
Tちゃん「安心しました」
bar「神社とかお寺を建てるのは宮大工ってゆーやろ?」
Tちゃん「はい」
bar「お城を建てたのは…」
Tちゃん「城大工とか言いませんよね」
bar「なんでわかったの?!」
Tちゃん「そんな前フリがあったら誰でもわかりますよ!」
bar「で、ホントは誰? 姫路城といえば豊臣秀吉とか池田輝政しか」
Tちゃん「さすがのbarさんもわかりませんか」
bar「うん。さすがのbarちゃんもわかんない」
Tちゃん「かの、加藤清正公です」
bar「へー。そーなんやー」
Tちゃん「今の姫路城の基礎は池田輝政ですが、元々は清正公なんです」
bar「ふーん」

 なんて会話を交わしながら、えっちらおっちら約30分かけて登っていくと、見えてきました天守閣。

bar「おー。間近で見上げると威圧感あるなー」

 天守に入るにあたり、スリッパに履き替え、いざ天守閣へ! だが入ってみると真っ暗…。どーやら入った階は天守閣では地階にあたり、倉庫や厠しかなかったらしい。ってわけで、いざ1階へ! ……と思ったら、

bar「これナニ?」
Tちゃん「見りゃわかるでしょ。階段です」
bar「あぁ。稲川淳二の…」
Tちゃん「それは怪談です」
bar「ブッシュと小泉の…」
Tちゃん「それは会談!」
bar「あとは…」
Tちゃん「諦めて登りましょう」
bar「はい…
Tちゃん「…なんで、ここで階段の写真を撮ってるんですか?」
bar「げっ」
Tちゃん「また今の会話をネタにするんですね」

 日本の誇る冒険家・植村直己の最期の舞台となった北米の最高峰・マッキンリーを思わせる急な怪談……ちがった、階段を這うように登った1階にあったのは、

最上階って6階なの?!

 各階に展示されている姫路城の歴史や遺構の見本などを見学しながらも、ひーひー言いながらようやく最上階である6階へ。最上階は意外なほど狭く、長壁神社という神社がちっちゃくある。説明によれば、姫山(姫路城の建っているところ)にあった地主神で、築城の際城外へ移されたのが、神の祟りがあると場内に戻されたものであるらしい。おまけに宮本武蔵の妖怪退治の伝説もあったりして。

 だけど天守閣からの眺めは絶景! 真正面に見える大手前通りのつきあたりが、駐車場のおっさん様に勧められた駐輪場のあるJR姫路駅。姫路城の外濠はそのあたりまであったらしく、改めて姫路城の規模の大きさを実感。

 「直行コース」の看板にしたがって下城している途中に井戸を発見。石碑を見ると「お菊井戸」とある。

bar「お菊井戸? 聞いたことあるな」
Tちゃん「播州皿屋敷ですね」
bar「あ。それも聞いたことがある」
Tちゃん「『い~ちまぁ~い、にぃ~まぁ~い』ってやつでしょ」

 そう。お家乗っ取りの企てを女中であったお菊が知り、城主の難を見事救ったのだが、家老はそれを恨み、家宝の皿10枚組のうち1枚を隠し、それをお菊のせいにして責め殺し、井戸に投げ込んだのだった。しかし、夜ごと皿の枚数を数える女性のか細い声が井戸の底から聞こえるようになった…。

Tちゃん「僕はマジで霊の映ってたエロビデオ見たことありますからね」
bar「エ、エロビデオ?」
Tちゃん「はい。そりゃすごかったッスよ」
bar「そんなにすごいビデオだったの?」
Tちゃん「はい」
bar「亀△縛▲の出てくるS■モノとかス○ト○モノとか…」
Tちゃん「すごかったのは霊ですよ…」
bar「っていうか、その発言は清潔感溢れるTちゃん路線に傷がつくのでは?」
Tちゃん「え? 僕ってフツーにエロですよ」

 この会話はネタにせねば…。そんなことを考えながら僕はTちゃんとバイクを路駐した場所に戻った。若干心配ではあったのだが、バイクは2台とも無事。

 時刻は11時半。次は昼メシだー!

(つづく)