rider notes

BC-ZR750C乗りの残しておきたいログ

箱根~富士宮

江ノ島

 初めてのユーザ車検でテンパッてた日、なんとTちゃんが上京していた。港町に来てからというものソロだった僕としては、慣れ親しんだTちゃんと一緒に走れるのは、やはりうれしい。

 雨の前日は僕の車検ということもあったので、晩7時に港町駅で待ち合わせて晩飯を済ませ、すっかり晴れ上がった翌日は僕の秘密潜伏基地近くに朝6時集合。

 朝の気温は3℃。予想最高気温は13℃だったが、天気予報では「この冬一番の寒さ」の日。よりにもよって「この冬一番の寒さの日の一番寒い時間帯」に集合してしまうあたりは、さすがはお調子者コンビである。

 ところでTちゃんはCBR600RRのオーナーなのであるが、さすがにあのポジションで商都から片道600キロというのはキツすぎる。というわけで、魔都心にあるレンタルバイク屋さんでボルドールを借りての参戦。

 Tちゃん曰く「次の候補車ですからね」とのことだが、CBRに乗っていながら「次」を考えるあたり、さすがはTちゃん。

 港町に到着した日、車検でてんてこ舞いだった僕に放置されていたTちゃんは、クソ渋滞この上ない山手通りをえげつない走りで激走したことですっかり自信をつけたらしいのだが、今回の目的地である箱根~富士宮となると、

Tちゃん「距離感も方向感覚もありませんよ」

 それを言うなら、僕もない

 田舎者には悪魔の巣窟としか思えないR246はやめておき、湘南方面に出て江ノ島からR134等の海際ルートで行くことにした。藤沢までのR467を走っていると太陽も見えてきて、推定気温3度、体感気温マイナスとはいえ、気分はすっかりアゲアゲ! そのままビューン! と行きたいところだったが、前日車検場やらナップスやらURFやらとうろうろしていた僕の四郎号のガソリンが若干ピンチということで、R467沿いのコンビニ&GSに立ち寄ることに。

「ちょーどよかったッスよ~。おしっこが漏れそうやわおなかがすいてるやわで」

 とコンビニに飛び込んでおしっこを済ませると何やら買ってきて、はふはふ食ってた。

 少々まったりしたところで再びR467を南下。途中R1で新湘南バイパスというコースもあったのだが、せっかくここまで来たんやったら時間帯もかなり早いからそれほど混んでないやろうし......と思い、Tちゃんに江ノ島を見せてあげることにした。案の定、

「おー!!! これが有名な湘南ですかー!!! 初めてですよー!!! サザンですねー!!!」 と「勝手にシンドバット」を歌いだす始末。ちなみにTちゃんにはミスチルの「シーソーゲーム」を歌わせるとサイコーである。

うっすら富士山も見えちゃったりして

西湘バイパス

 そこから始まるR134の最初のうちは真正面に富士山を見ながら走る快走路なのだが、R129との合流近辺になるともう渋滞。ただ前日の港町内の渋滞を経験してしまったTちゃんはすっかり感覚が麻痺してしまっているらしく、

「こんなん渋滞のうちに入りませんわ。我ら大阪流のえげつない走りでさっさとかわしましょう」

 などとあっさり言うので、それなら遠慮なく…と大阪流のえげつない走りで。大磯(西湘バイパス入り口)の手前からようやく空きはじめ、あとはそのまま西湘バイパスでバビューン。小田原の手前にある西湘PAで休憩。駐車場には、すでにバイクが山盛り状態。

Tちゃん「いやぁ、助かりましたー!!! おしっこが近くて近くて......」

 とか言いながら、トイレに入ったかと思うと、出てきてすぐさま自販機でコーヒー買うて飲んでる。

 まさしく、「出したら飲む」の法則である。

Tちゃん「それにしてもさすがはV-Tech。伸びといったらありませんよ!」

 新宿のエムワンというレンタル屋さんから借りてきたCB400ボルドールに、なにやらTちゃんはすっかりメロメロのようだ。

 そんなTちゃんと一緒にタバコをぷかぷかやってると、何やらツーリングクラブらしき数名のオトナなライダー集団が集まって、紙を見ながらルートの確認をしている。

Tちゃん「あの人たちも箱根でしょ。凍結は大丈夫なんちゃいます?」

 僕たちの心配。それは「箱根の凍結」である。いくら暖冬とはいえ天下の険と言われた箱根。気温が平地と10度は違うとも言われたりするし、さすがにこんな真冬の箱根なんぞ来たことがない。でも確かにこの場所(西湘バイパス)の下り線にいてるということは、伊豆へ向かうか箱根を越えるかのどちらかに違いない。

箱根ターンパイク

 こりゃなんとかなるか、と相変わらずのお気楽2人組が西湘バイパスを抜けると、そのまま箱根ターンパイク。数ある箱根のルートの中でも、高速ワインディングが楽しめる屈指のルートだ。今日の目的の一つでもあったのである。

Tちゃん「これがかの有名なターンパイクですか......」

 かく言う僕も数回しか走ったことがない。まぁ昔は時間はあるが金はない状態だったから有料道路なんてほとんど走ったことがなかったからね。心配していた路面凍結もところどころ。この時期にしては快走~。僕はこれくらいがちょうどいいです。

 さて、実は以前、☆一徹さんにターンパイクを走るんなら大観山というところにあるダムトラックスカフェというお店がお勧めですよ~と言われていたので是非寄ろうと話していたのだが、

www.dammtrax.com

 大観山あたりはやや靄がかかってまして、それに気をとられているうちに通り過ぎてしまった。結局そのままR1まで下って進むとある、道の駅 箱根峠で朝めしを食うことにした。

www.hakone.or.jp

 というのは表向きの理由で、本当はTちゃんが、

Tちゃん「ダメです......またおしっこが......」
bar「なぬ?! またか! お前、体内の80%がおしっこでできてるんちゃうか」

 という会話があったからであり、Tちゃんのおしっこが終わってタバコを吸ってると時間がちょうど9時になったこともあって、んじゃ、めしでも食うか、となっただけなのである。

 店内に入って、さぁ食券でも買うか…という時に、Tちゃんのケータイがピロピロ。すると、

bar「どしたん?」
Tちゃん「細木数子先生の六星占術メールです」
bar「またかいな」
Tちゃん「前までは iモードで見なあかんかったんですが、最近は自動的にメールが来るんです」
bar「ほんとに数子好きなのね」
Tちゃん「六星占術好きなだけです」

 メニューはうどんかそば。まぁこんなところで何を求めるというわけでもないので、僕たちはうどんとそばをチョイス。できあがったところで呼ばれ、カウンターまで取りに行ってくれたTちゃんからうどんを受け取ると、

く、黒い…

Tちゃん「こっちはしょうゆだしですから」
bar「しもた......。うどんなんぞ頼むんじゃなかった」
Tちゃん「そんなことよりも、昨晩から麺類ばかり食ってる方が僕は気になります」

 僕らは前夜、港町駅近くの某ラーメン屋さんでラーメンを食ったばかりだった。

bar「そんなことを気にしてはいかん。麺類は人類が勝ち取った食物なのだ!」
Tちゃん「また、わけのわからんことを言うてるし......」

 というわけでそそくさと朝めしを済ませ、あとは駐車場でタバコを吸いながら、日銀による利上げについて意見を交換し東京都知事候補者選出をめぐる民主党の迷走ぶりに2人して落胆し六ヶ国協議における日本の孤立ぶりについて激論を交わしたのである。

 というのは真っ赤なウソで、芦ノ湖越しに富士山方面の絵を描いてはるおっちゃんの絵を見ながら、さぶいなーなんて言いつつ、ただ単にぼけーっと景色を眺めていただけだった。

 すっかりほっこりしたところで再びR1を西へ! 目指すは、静岡県富士宮市である。

富士宮やきそば

 富士宮といえば焼きそば。港町に遊びに来るというTちゃんにどこに行きたいか考えておくように言っていたところ、なぜかTちゃんが希望したのが富士宮の焼きそば。

 Tちゃんによれば、富士宮が町おこしとして取り組んでいるらしい。「富士宮やきそば学会」なんてのも作り、町おこしとして取り組むくらいなんやから、そりゃそこらの店で食うても、さぞかしうまい焼きそばを食わせてくれるやろ......という目論見なんである。

umya-yakisoba.com

 R1も三島まで下りきり、あとは交通量は増えたがバイパスになっているので、そのまま沼津~富士市と淡々と進む。すると何やらこのあたりから雲行きが怪しくなってきてるし…。右手に見えるはずの富士山も裾野しか見えない。しかも、途中のR139に入ると小雨がパラパラ。

 とりあえず富士宮駅に行けば観光案内所くらいあるやろ......と駅に向かうと、なぜか気づく前に駅を通り越してしまった。見ると閑散としてるし。

bar「おいおい。町おこししてるんちゃうんかいな」
Tちゃん「まぁこんなもんでしょう」

 踏み切りの向こうにジャスコ発見。

Tちゃん「いいところにジャスコが…。実はさっきからずっと......」
bar「おしっこやろ」
Tちゃん「ピンポ~ン」

 でかそうなジャスコだったので本屋さんもあるやろうから、そこで具体的にお店を決めようということになり、僕らはツーリングの最中としては珍しくスーパーに立ち寄ることにした。

 スーパーの中はぬくぬく。僕らはおしっこを済ませると2階の本屋さんでるるぶやら観光案内の本やらを漁りまくり。やがてようやく一軒のお店に照準を定め、暖房に後ろ髪引かれる思いを残しつつ、早速出発することにした。

 でっかい鳥居の浅間退社の横を走ってR139を横断し、そのまま県道180号を北上。しかし、今度はそこからがさっぱりわからん。

 いい加減通り過ぎてしもたんちゃうかという頃合いにあったコンビニで尋ねると、さすがは地元。ラッキーなことにそのコンビニからわずかに戻った交差点を西に入って道なりに進むとありました本日の目的地「ゆぐち」。

r.gnavi.co.jp

 2~3年前の「富士宮焼きそばのおいしい店人気ランキング」でもトップを争った名店らしい。なんでここにしたかというと、Tちゃんの下調べでもやはりヒットしたお店だったからである。特に看板が出てるわけでもなく、特にでかい構えをしてるわけでもない。ぼさーっと走ってたら通り過ぎそうなシチュエーションだが、お店の前の駐車場には所狭しと車が止まっていた。その片隅にこっそりとバイクを止めて、いざ出陣!

 暖簾をくぐって中に入ると、すでに多数のお客さん。厨房からは威勢のいい声が聞こえてくる。幸いテーブルが空いていたので僕らはそこを占拠。するとテーブルの上には伝票が。他のお客さんを見ていると、お店のおっちゃんに伝票を渡しているようだった。どうやら自分で注文を書いて、それを渡すシステムのようだ。

 僕が卵焼きそば(550円)、Tちゃんがねぎ焼きそば(650円)に決めて伝票に書き、鉄板の前で焼きそばを作っていたおっちゃんに渡し、あとは出てくるのを待つばかり。 時間帯が12時台だったこともあって出てくるのに多少時間がかかったけど、出てきた焼きそばはまさに垂涎モノ。じゅるる。

 出てくるのに時間がかかったのだが、食うのに時間はかからん。

 どこかどう違うのか、なぜかミョーに美味い。あっという間に食い尽くした僕らだったが、「ネットではよく『足りなかったのでお好み焼きも注文した』とか書いてますけど、これだけあれば十分ですね」(Tちゃん談)ということで、僕たちはここで退散。焼きそばでこれだけ満足できるとは.......。恐るべし富士宮焼きそば

 お店から出て空を見上げると、相変わらずどよ~んとした空模様。

 寒さもいいかげん極まってきてたところだったし、どーせ帰りも箱根を越えるんやから......とのことで、箱根のどこかでお風呂に入って帰ろうということに決定。そうと決まったなら話は早い。R139から西富士道路を経由して東名高速で沼津まで激走。それでも下りたR246はすでに車でえらいことになってました。R414とR1と3本が合流してるわけやからしかたないとはいえ、ほんまにこっちはどこで何をするにも渋滞・行列やな。

 すると信号待ちでTちゃんがひと言。

Tちゃん「おしっこが漏れそうです。どっかのコンビニに寄りましょう」
bar「そのセリフ飽きた。もう漏らしていいよ......」

弥坂湯

 R1に入ったところにあったコンビニでおしっこ休憩し、そこから箱根までは快走ルート。芦ノ湖から今度は箱根新道を使って箱根湯本までさくっと戻り、いったんR1を宮ノ下方向に戻って旧道に入ると、目指した弥坂湯。

www.town.hakone.kanagawa.jp

 ツーリングマップルには、「趣のある銭湯感覚の湯」とありましたが、ぼろぼろの暖簾。軋む木枠の戸。ロッカーなんてありえないむき出しの脱衣棚。どこかばあちゃんの家を思わせる柱。

 趣ありすぎ。でも料金は500円。料金だけはイッチョマエだ。

Tちゃん「『銭湯感覚』であって『銭湯』ではないわけですから、まぁしかたないでしょう。なんといっても『箱根の湯』ですからね」
bar「そんなオトナな意見はええから、湯船の中は勘弁してくれよ」

 お湯の加減はややぬるめ。その方がまったりと入れるからいい。番台のおばちゃん曰く「ここのお湯は、夏に熱くて冬はぬるいのよ。なぜかわかる? 地下から源泉をそのままもってきてるからね」とのことで、それはとても納得できる話だった。

 すっかりほっこりした僕たちは風呂から出たのだが、ここでTちゃん。

「ダメです。喉が渇いてきました…。どこかにジュースの自販機ないかな…」と一人で自販機を探してぐびぐびやってました。

bar「おいおい。どーせまたすぐにおしっこになって出てくるんやから…」
Tちゃん「飲んで出す! 出したら飲むっ! これが僕の生きざまですっ」

 とうとう開き直ってしまったようだ。

 ここまで来たら特にどこという見所があるわけでもなく、箱根を越えてきてもすっかり曇り空で気温もこれから下がる一方。それならそれぞれ早めに帰って港町駅でまた待ち合わせ、どっかでメシでも食うか! ということになったので、すぐさま西湘バイパスに乗ってバビューン。途中Tちゃんが放尿のためにと熱望した西湘PAで空を見ても、相変わらず雲がとれてない。

 R134からR129に入って厚木街道に入り、もういいかげん垂れてくる鼻水に味がなくなってきた頃、ようやく僕たちはそれぞれの帰途についたのである。

(おしまい)