四国|2.絶景連発

 県道21号線を走っているうちに次の目的地である「琴弾公園」の案内看板が出てくる。作田川と一の谷川という2本の川を立て続けに渡ると「銭形展望台」の看板も出てきて、3本目の財田川を渡った先の突き当たりを右折。そうしたら「←ココ曲がれ」と小さな看板が出てくるのでギュイーンと左折したら、展望台への登り口につながる公園内のプライベート感のある道が現れる。

 油断していると見逃しそうな登り口からぐいぐい上っていく坂道は、狭いうえにヘアピンカーブもあって思ったより大変だったが、なんといっても一方通行にしてくれているので安心といえば安心。(逆走があったら一巻の終わりだが)

 5分ほどくねくね上っていくと駐車場に到着。車にして数台分は空きがあったが隅っこの木陰に止めておいた。

 気温は何度だ……と思っても調べようがないが、止まると途端に押し寄せてくる熱された空気……。ジャケを脱いで数分歩いたら展望台もあるにはあるが、その横に無造作に置かれたようないくつかの巨石の上からでも十分に眺められそうだ。実際、十数人の先客が入れ代わり立ち代わり、その巨石の上にのぼったり下りたりしながら忙しそうにスマホで写真をパシャパシャやっている。ぼくも負けじと隙間を伺ったり順番を待ったりしてなんとかそれらしい写真ゲットできた。

 ところで、我々の世代だと「銭形」とくれば「平次」(やはり大川橋蔵)か「とっつぁん」かの論争は避けて通れないのだが、公式HPによると、

有明浜の砂に描かれた銭形砂絵「寛永通宝」は、東西122m、南北90m、周囲345mもある巨大な砂絵で、琴弾山山頂から見るときれいな円形に見えます。一般には、江戸時代寛永の頃藩主を歓迎するために一夜にして造られたといわれており、他に類を見ないものといえます。この銭形を見たものは健康で長生きができ、お金に不自由しないと伝えられており、近年銭形を見て宝くじを購入した人が高額をあてたことから金運スポットとして知られ多くの観光客が訪れています。テレビ「銭形平次」のタイトルバックにも採用されています。

観音寺市観光協会観光ガイド

 ということで、大川橋蔵に軍配が上がっているのだった。(よくわからんが)

 持参したマイ双眼鏡で細部までまじまじと見てみる。「寛」の字が若干デフォルメされてはいたが、ホントに「寛」「永」「通」「宝」をちゃんと砂で作ってるんだからすごいなぁ。宝くじ高額当選スポットということだから、商都に帰ったらなにはともあれロト7買わなきゃだな!

 10億当たったら何買おうかなあと獲ってもいない狸の皮を数えながら県道21号線に別れを告げ、財田川に沿って県道49号線に入ると、次の目的地、「天空の鳥居」の看板も出てくる。

 ところどころにある看板を見ていたら、どうやら「天空の鳥居」と「稲積山展望台」は同義のようだった。「稲積山展望台」の看板にしたがって県道49号線を左折して進んだら、やっと「天空の鳥居」の看板とともに色も大きさもまちまちな看板が見えてくる。いよいよスタート地点に立った気分になる。

 上り道は銭形展望台のときのように一方通行になっているわけではない。車だとすれ違いにも苦労しそうな1.5車線の幅のうえ、山側(上り側)には側溝がむき出しになっているからか「脱輪注意」の小さな看板がところどころにある。でも、対向から車が来たのはわずか数台。相変わらずの平日パワーに感謝だ。(土日祝はマイカー規制をしているとの看板も発見)

 くねくねと上るにつれて、「絶景やん」と思える下界の景色が視界の端っこに映ってくるのだが、感動はできれば「天空の鳥居」から見下ろすときに取っておきたいから、敢えて視線を向けず目の前のカーブにだけ神経を集中させる。

 10分ほどして上りきったところには10台ほどの車が止められるスペースがあった。端っこに四郎号を止めてジャケットを剥ぎ取るように脱いだら、いざ突撃!

 と思ったら、「ここから歩いて10分」とのご丁寧な看板。目の前には、笑っちゃうほど清々しい見事な坂道。

 「絶景を見たいなら、己の足でここまで来い」との神のお告げだ。ここまできたら何がなんでも辿り着いてやるという妙な使命感のようなものもあり、きついところだと15度以上はありそうな急斜面を一気に上りきり、見えてきたのはコレ。

 おぉ……と思わず声が出そうなほど見事な景色。

 正直に言えば、四国だしそんなに大したことないよねと見くびっていた。とりたてて鳥居がでかいとか立派だとかではなく単なるロケーションの勝利というだけのことなのだが、それでもこの地に鳥居があり社があり、それをこの地の人々が受け入れ、大事にしてきた時間と想いは尊い。

 おまけに風も心地よく、だくだくにかいていた汗もさら~っとみるみる引いていくのがわかる。みんな思い思いに写真におさめていくタイミングを推し量り、見事に誰もいない天空の鳥居をゲット。

 念のために言っておくが、消しゴムマジックを使ったんじゃないぞ。

 さて、前回の「モネの池」でもそうだったのだが、天空の鳥居にうつつを抜かしていてはバチが当たる。ちゃんと高屋神社本宮に道中と家内の安全をお詣りしておくとする。

 なんだか名残惜しいような気分ではあったが、あとは目に焼き付けるとして、しばし絶景を眺めてから下山するとしよう。

 ちなみに行きに上れば帰りは下りなのだが、駐車場への帰りは帰りで転げ落ちそうなほどでなかなか気が抜けない。後ろから二人組の芳紀の女性がキャッキャ言いながら楽しげに、半ば駆けるようにぼくを追い抜いていった。

(つづく)