rider notes

BC-ZR750C乗りの残しておきたいログ

信州|5.野麦街道~R361

あゝ野麦峠乗鞍岳

 そういえば、今日は朝の儀式を済ませていない……。

 ある意味切迫した腹を抱えたまま県道26号線に戻って南下するとほどなくして、「野麦峠→コッチ」の看板にしたがって県道39号線へ。陽射しが燦々と降り注いでやっぱり今日も冬ジャケの中はTシャツ1枚になった状態で、鬱蒼とした上り道を車なんか一台もいないまま快調にするすると流れる。野麦峠キャンプ場を過ぎて現れた旧野麦街道。

 『女工哀史』や『あゝ野麦峠』をご存じの方なら感慨もひとしおでは。

 明治~大正時代、信州(長野)の岡谷や諏訪の製紙工場へ糸ひき稼ぎに行った飛騨(岐阜)の若い女の子たちが命がけで越えたのが、この野麦峠。標高1672mの野麦峠はまだ13歳の女の子たちが故郷である飛騨に帰る年の暮れには大雪の難所で、郷里の親に会うこともなく命を落とす女の子たちも多かったのである。当時は「防寒具」らしい服装を一般人ができるような時代じゃなかったのだ。「殖産興業」を旨とした日本近代化には、社会の授業で習うような、たとえば「鹿鳴館」みたいな華やかなことばかりではなく、こういった悲しい物語もあったわけだ。大竹しのぶ主演で映画にもなってますな。

(今の新しい野麦街道でもこんな感じ。長野側は森林道路だ)

 そこからするすると上りきると、峠の休憩所。9時半になるこの時点ですでに腹の臨界点ギリギリだったボクには、そこにあった公衆トイレが神の御殿に見えたのは言うまでもない。まさに「あゝ野麦峠」である(意味不明)。

(これが神の御殿)

(峠にある乗鞍岳を望める展望台。大きな雲がかかっちゃってる)

 乗鞍岳には雲がかかってすっきりしてないけど、トイレのおかげですっきりできたボクはほくほくした気分で下山開始。その途中で、雲が晴れかけてる乗鞍岳が見えるところアリ。

 思わず見入っちゃいます。

 峠からぐいぐいとくだっていく途中、ふとミラーを見ると、そこにははっきりくっきり乗鞍岳が。急いでUターンして遠くを望むと、

 車が一台も来ないただの県道だけど、しばし一服…。この辺りは小さな集落があって、ふと見ると畑で農作業中のおばあちゃん。このおばあちゃんは晴れればいつでもこの風景を見れるんやなぁ……と思うと、すげーウラヤマシイ……引っ越そうかな。

 走っていく方角的にもう乗鞍は見れないかなぁ…と思ってたから、予期せずここからキレイに眺めることができたのは嬉しかった。

(これが今回のツーリングで見納めになった乗鞍岳

 ミラーに映る乗鞍岳の残り香を満喫しながら野麦街道(県道39号線)を下ってR361に合流。

 しかし、あぢー! とにかく暑い。野麦峠ですら暑かったのに、下界にきたら、そらもっと暑いわよ。ってなわけでR361を木曽方面へ。そこから木曽方面はまた少しずつ上っていく。

長峰峠と御嶽山

 そう。目指すのは、また峠である。R361を木曽福島へ向かうあたりからは高原になっていて、御嶽山の北側に広がるのは開田高原。その入り口にあるのが標高1350mの長峰峠。

 ツーリングマップルによると、「目前に聳える御嶽山が圧巻!」とある。野麦峠から約1時間。10時半ごろ、期待に股間を……コホン、胸を膨らませながら到着してみると、

 どこが展望所? すぐ近くにいた中部電力のお方々に聞いてみてもさっぱりわからん。しかたがないのでそこから先に進んでみると、ちょっとしたスペースがあって、

 今度は、御嶽山

 雲はあるけど御嶽山にはかかってないし、山頂までがくっきり見えると気持ちいいぞ。ただの道端だけど、通りかかる車もなく、ガードレールに座って御嶽山をしばし眺めてマッタリ。後輩からの「御嶽山って北アルプスっすか? 中央アルプスっすか?」というメールから始まった今回のツーリング。それが今目の前に堂々と聳えているのである。感無量。

 ちなみに御嶽山は独立峰としては富士山に次ぐ標高3067mの剣ヶ峰を主峰とする立派な火山。いや~、北アルプス穂高連峰乗鞍岳もいいけど、こうやって眺めてみると独立峰っていいなぁ~。

九蔵峠からの御嶽山

 長峰峠からは少し下っていくけど、あとは適度なアップダウンのある開田高原

 こりゃええわ~。おまけに高原ってこともあって、暑い中でもけっこう風もあって快適~ぃ。ってことでそのままするするする~っと進むと、「九蔵峠」の看板があって、ふと遠くを望むと、

 また御嶽山。しかもさっきの長峰峠よりもスカッと見える。何がすごいって、独立峰らしく裾野が左右にキレイに見えるのがいい。

 ホントにもうR361って御嶽山満喫ロードだ。いったん御嶽山を背中にして走ってても辺り一帯は高原だから開けてて気分も爽快。

地蔵峠

 途中にあったGSで給油してからR361を進むと「木曽馬の里」の看板が見えてきて、そこを越えると「地蔵峠展望台→」。次の標的はそこにある「御嶽展望台」。「乗鞍と木曽駒が美しい」ってツーリングマップルにもある。本日5つ目の峠(白樺峠→野麦峠長峰峠→九蔵峠→地蔵峠)だ。

 地蔵峠(御嶽展望台)への道はツーリングマップルだと「白い道」。いわゆる市町村道? でもご心配なく。途中の分岐にも全部看板があってわかりやすい。途中から峠に向かうだけあってだんだん上り坂&細くなってきて、道の両側には枯れ葉が積もってて久しぶりに危機感アリ。

 でもフィトンチッド満載道路。ほどなくして道端に展望台が登場。

 ここからの御嶽山も裾野がキレイに見えていいですなぁ……。バイクはおろか人っこ一人通らない静か~な峠道で、しばらくずーっと御嶽山を見ちゃってました。くどいようだけど、連峰もいいけど、独立峰もすっきり見えていいなぁ……

 30分以上もぼ~んやり見てると、そのうち御嶽山の山頂にどよ~~~んと雲がかかってきてしまった。

 途中で一台、CB1100(1200?)が来たから挨拶でもしようかと思ったんだけど、な~んとなく「話しかけるなオーラ」が出てたような気がしなくもなかったので先へ進むことに。

(その先にあった「地蔵峠」の由来となった地蔵様)

唐沢の滝

 名もなき町道(本当は名前くらいあるんだろうけど)をぐいぐい下っていく。道は狭いが、対向車なんて来ないから何の問題もない。

 R361までもうすぐかな~なんて考えてたら急に道が開けて、何やら看板が立ってる。

「唐沢の滝」という滝が奥にちっちゃく見える。看板によると結構なレベルの名勝のもよう。せっかくなので接近を試みることに。

 意外とご立派。高さは少しずつ低くなってるみたいだけど100mはあるそうだ。帰ってからネットでググってみると、トレッキングコースにもなってて雪景色も結構有名なようだ。

 駐車場に戻ると、めちゃ久しぶりに観光客の車が2台到着。挨拶をしたり写真を撮ってあげたり。ぼちぼちお昼である。朝から大量にパンやら缶詰やらを食べたからたいして腹も減ってないのだが。

 この先は再びR361に出て、そのまま進むと木曽福島である。

(つづく)