再び県道665号線に戻り、静御前生誕の地を掲げる磯集落、そして日本中央標準時子午線最北端の塔を通り過ぎながらも、左手にずーっと見える日本海の穏やかな海が……あれ? 日本海って穏やかだったっけ?
通り際にあった浅茂川集落は温泉もあるようで、道沿いには何軒もの温泉旅館とでっかい鳥居も。浦島太郎を祀る島児神社という。
網野町の県道665号線からまたまたR178にスイッチしたらほどなく案内看板が見えてきたので左に折れて進むと、そこが山陰海岸でも屈指の海岸線を誇る琴引浜。
大きな駐車場が見えてくると、「駐車料金500円」の看板も大きく見える。まぁこれだけメジャーな浜だし500円も仕方ないと諦めながらおっちゃんの指示に従って四郎号を止めると、「下の浜におりない(=駐車場から眺めるだけ)なら駐車料はいらない」と言う。何台か車やバイクが来るたびにおっちゃんたちは一台一台聞いて回っていた。こういうおっちゃんたちのおかげできれいな浜が保全されているんだと思ったら、楽しませてもらう立場としては、感謝こそすれ鬱陶しがるのはバチが当たるというものだ。
ところで、琴引浜は砂が乾燥した時期に歩いたら「キュッキュッキュッ」と音がする鳴き砂の浜としてとっても有名だ。鳴き砂の浜としてぼくが今でも覚えているのは、島根県大田市にある琴ヶ浜。仁摩サンドミュージアムという鳴き砂のミュージアムもある(入ったことはない)くらいなのだが、確かそこも相当な規模だったように覚えている。ただ、この琴引浜も鳴き砂の浜の規模として日本でも屈指なのは、この景色を見渡してみればよくわかる。
そもそも歩くたびにキュッキュッと鳴る音を琴に見立てるなんてロマンチックにもほどがある。最初に琴の音だと感じたのは誰だったんだろう。
浜では砂と波に戯れるカップルや家族たち、そしておそらく砂の鳴き具合をレクチャーしているのであろう管理のおっちゃんとの心温まる交流絵図が、快晴の下どこか穏やかな雰囲気で漂っていた。波もさほど強くない日本海を、ぼくは駐車場からしばらく眺めていた。
R178に戻ってちょっとしたら、「伊根 経ヶ岬コッチ!→」「伊根 丹後アッチ!↑」と青看板も忙しくなってきて、いよいよ山陰海岸もゴールが視野に。
と思ったら、砂方海水浴場を過ぎたすぐ先に海に向かって作られた見事な棚田を発見。
棚田はわずかなしかない土地を有効に利用するため考えられてできたものだが、こうやって見ると海に向かってどこまでも棚田が続いているような錯覚に陥る。
間人(たいざ)後が浜の交差点で「←立岩コッチ」の看板が見えた。R178を右折しようと思ったのだが、ここまで海食崖をさんざん眺めてきたんだから、ここまできたら寄って見ずにはいられない。どんなもんかと寄ってみると、
とんでもないデカさだった。すぐ近くにまた別の立岩を遠望できる駐車場があるらしいので、そちらにも寄ってみる。
こちらの駐車場は車が10台も止まればいっぱいになりそうな感じだったが、地元のおっさん3人が隅っこで酒盛りをしていたくらいであとは2~3台ほどしか止まっていなかった。バイクはもちろんぼく一人。
砂浜の向こうに異様な姿の立岩。この立岩は花崗岩ではなく安山岩だが、砂州と安山岩の組み合わせは山陰海岸の集大成といってもいいんじゃないだろうか。
R178を少し進むと、屏風岩展望台というところが見えたのでストップ。「岩」と聞けば敏感に反応するカラダになってしまっている。
(つづく)