rider notes

BC-ZR750C乗りの残しておきたいログ

丹後|3.天橋立・伊根

天橋立

 与謝峠のドライブインを出発した僕たちは、途中にあった片側通行の信号を見落としたり、宮津に入ってすぐに県道2号線の曲がり角を間違ったりしながら、なんとか宮津湾を臨む位置までやってきた。R176から今度こそ正真正銘の県道2号線に入ると海の向こうにずら~っと並んだ松林が見えてきた! やってきました、天橋立

 やがてほどなく観光客らしきカップルやら家族連れやらが道の両側の歩道をぞろぞろぞろぞろぞろぞろぞろぞろ…と歩いている天橋立駅前を通過。僕らはもちろんジェントルマンなので駅前に二輪の駐輪場があれば入れようと思っていたのだが、どこも満杯。しかたなく駅前を通り過ぎて少し進むと、大きく歩道をとってあるカーブを発見した。ここなら駐車しても歩行者の邪魔には絶対にならない。僕たちはガードレールに寄せて斜めに駐車。天橋立までは少し歩くが、まぁしかたあるまい。

 道端を歩いていると潮の香り。ふと見ると海に浮かぶように並ぶ松林。

Tちゃん「器用な生え方してますねぇ」
bar「これが天橋立や」
Tちゃん「マジっすか」
bar「ウ・ソ」
Tちゃん「やっぱり!」

 最近どーもTちゃんに僕のハッタリが通じなくなってきてるような気がする。

Tちゃん「ちっちゃいと思ったんですよ。誰もいないし」

 数分歩くと、天橋立に続く商店通りに到着。両側に並ぶ土産物屋さんやメシ屋さんのウインドウを軽く流しながら進む。

 天橋立につながる廻旋する橋はタイミング悪く回らず、僕たちはそのまま天橋立に上陸。

 初体験・Tちゃんは「はぁ…」とか「ほぅ…」とか言いつつ、きょろきょろしながら進む。

Tちゃん「見事ですねー。なんでこんな細長いところに松がうにょうにょ生えてるんでしょうか」

 すると日本三景碑の石碑を発見。

Tちゃん「ところで…」
bar「何?」
Tちゃん「日本三景って、残りの2つはどこなんですか?
bar「書いてるやん」

 進むとすぐに目的の「はしだて茶屋」を発見。

 Tちゃんとのツーリングでは毎回何かしらの目的(楽しみ)を決めるのだが、今回は場所じたいが目的なので「食」は軽く済ませることにしていた。とはいえ、コンビニのサンドイッチじゃちょっと物足りない。ってことで、今回は宮津湾直送・あさり丼とお蕎麦の定食950円也。

 意外とつゆだくだが、あさりだけにあっさり(ホントなんだもん…)。残念ながら育ち盛りの僕たちにはやはり量が足りない。

bar「あと一人前は食えるな」
Tちゃん「僕はあと二人前と知恵だんご食えます」
bar「知恵だんご?」
Tちゃん「はい。表に書いてました。外で食えるみたいです」

 お勘定を済ませて外に出てみると、確かに「知恵だんご」の大きな文字が書かれた看板。食ってみると、甘い味噌味がこんがり。

Tちゃん「でも、なんで『知恵』だんごなんでしょうか?」
bar「ではお答えしよう」
Tちゃん「フツーに答えてください」
bar「ここらは文殊っちゅー地名らしいわ」
Tちゃん「へ~。いわゆる『百人寄れば文殊の知恵』ですね」
bar「何人呼ぶつもりや」

 メシも済ませ、今度は本当の「天橋立」を見ようとケーブルカーに乗って山頂の公園に行くために来た道を逆戻り。そしたら、廻旋橋が運良く動くところに出くわした。 

「おぉ…」

 再び表通り(県道2号線)から「天橋立見るならこっち」みたいな看板を頼りにこじんまりとした古い住宅街にあるような道を進むとロープウェー・リフト乗り場。

 850円がJAF会員証の提示で780円になることを発見したTちゃん。あんたは偉いっ。

 リフトで5分ほど登ったところはビューランドという古く小さい遊園地になっていて、海際が展望台になっている。

 そこから見事に天橋立を眺められるというわけだ。

「おぉ…」

 また感動するTちゃん。まぁこのクラスになると何回見ても感動するけど。

「ホンマに、よーこんなんができましたねぇ」

 そうなのだ。日本三景や各地の名勝クラスはどこでも、まさしく「誰がつくったんだろう」ということだ。もちろん自然界の摂理に従ってこうなったというのはわかるのだが、昔の人たちが、神の世界をつくりだし、そこに理由を求めた気持ちを僕はとてもよく理解できる。そうでもしないと納得できないほど、すばらしい。

「では早速…」

 Tちゃんはそう言うと、おもむろに「股のぞき台」と書かれた低いベンチに上がり、股覗き。

「ふむふむ…」とかなんとか言っている。僕も天橋立は10数年ぶりだったので、ちょっくらカメラを抱えて股覗き。

Tちゃん「何をわざわざ写真撮ってるんですか?」
bar「何をって。ブログにも載せたいし、記念じゃん」
Tちゃん「さっき撮ったやつをサカサマにすりゃいいんじゃありません?」

 確かにそうだ。でも納得するのも悔しいので、

bar「お前はもうあかん」
Tちゃん「何がどうダメなんですか?」
bar「さっき普通の姿勢で撮った写真を逆にしてブログに載せるっていうのは…」
Tちゃん「はい」
bar「サカサマじゃなくて、イカサマですからっ!」
Tちゃん「うまい! お~い、山田く~ん…」

 などとアホな会話をしながらベンチに座って一服。

 しかし快晴。目の前には、おもちゃのような観覧車。今更ながら気づいたのだが、意外なことにカップルが多い。

bar「伊勢神宮といい、なんでこーゆーところでカップルが多いんや?」
Tちゃん「でもさっき、おっさんもいましたよ」
bar「おっさん2人組?」
Tちゃん「いえ。5人組でした」
bar「おえっ…」
Tちゃん「2人組もたいがいですけど…。しかしアレですねぇ…」
bar「何?」
Tちゃん「股覗きしてると、体中の血液が頭に集まってくるじゃないですか」
bar「体中かどうかはわからんが」
Tちゃん「股覗きをする理由がわかりましたよ」
bar「えー。おせーて」
Tちゃん「股覗きして血液が頭に集まると頭の中がぼーっとしてくるでしょ?」
bar「うん」
Tちゃん「すると、空の青さと海の青さとがまさにカオス状態になるわけです」
bar「カオス……」
Tちゃん「すると、そのカオスの中で、まさしく緑一色の天橋立だけが閃光のように浮かび上がって見えるわけです」
bar「閃光……」

 時々摩訶不思議になるTちゃんと僕は公園から下りて帰途につくことにした。帰りのリフトから見える天橋立に、僕はそっと呟いた。また来るよ、と…。(ウソ)

 さて、犯罪大国となってしまった日本で路上駐車してしまったバイクほど心配なことがあるだろうか。僕たちは仕方なく路上駐車したわけだが、ここが集団心理の恐ろしいところで、他に何台もバイクが止まっていたなら多少は安心できる。しかし、いかんせん止めたところには一台もバイクがなかったのだ。日本国民がいい方たちばかりであることを神に祈りながら止めたところに戻ってみると、

Tちゃん「ぎょーさんおるやん」

 僕たちはまだ若干時間があることを確認し、丹後半島にある船屋で有名な伊根へ行くことにした。そこから温泉に行こうと思えば、すぐのところにある。伊根はあまり観光地化されていない、静かで小さな町である。

伊根

 宮津からすぐにR178に乗り、そのまま丹後半島東海岸をほぼ道なり。車線も狭いうえにゴールデンウイークだからか意外と車が多く、写真を撮りたいな…と思ったところでも路肩に止まることすらできなかったのが残念。

 でも伊根の町は、僕の記憶にある伊根と全くといっていいほど変わっていなかった。連休ということもあってさすがに人は多少はいたが、町も観光地化されておらず、訪れた人間たちに媚びるようなところは見られなかった。道端には腰の曲がったオバア2人が日向ぼっこをしながら世間話をし、伊根の船屋を眺められる波止からは地元の子供たちが各々の竿から釣り糸を垂れる。昼というには遅く、夕方というにはまだ早い、まどろむような時間帯。

エピローグ

 たいして汗もかいておらず、寒いわけでもなく…ってわけで僕たちは温泉をパスし、その分帰りは少し遠回りしようということになった。R178を宮津まで戻り、そのままR178を舞鶴方面へ。そして由良川沿いにR175を南下して福知山を越え、篠山でR176にスイッチして西宮まで高速道路を我慢しようという壮大な計画である。高速代も節約できるしね。

 ところが宮津市内に戻った時にはすでに夕方。僕らのように日帰りの行楽を終えた家族連れやカップルが乗った車が多かったかどうかはわからないが、道にはえらい数の車。すり抜けするにはあまりにも狭い道と路肩。宮津市民ってこんなにいるんですか? というほどの数の車である。

 一時マクドの駐車場に避難。帰りの道はTちゃんに任せることにした(いつもだけど)。ルーティング大王がはじき出した答えは、R178を戻り、来た道(R176)で帰るのが得策とのことだった。来た道を戻るのは少し悔しい感じもするが、渋滞に巻き込まれてムダな神経をすり減らすよりはいい。

 結果的にこの選択は大正解。R176は道も広く、基本的に峠道なので車の流れはスムーズ。景色もいい! 行きに寄った与謝峠の休憩所で再び休憩する余裕もあったのである。

出して!

飲む!

 福知山で一旦R9(バイパス状なので面白味皆無)を走るが、ほどなくR175へ。少し南下する市島町からは竹田川と並行する。そこら辺りから舞鶴道とくっついたり離れたりしながら進むのである。道は広くて快走できるけど、周りの風景はもう一つかな。

 篠山から三田に入ると風景はすっかり町の中。ほどなく中国道・西宮北ICの案内標識も見えてくる。いざ西宮北から中国道に入ろうとした途端、その電光掲示板が目に入った。

「宝塚~西宮北 事故渋滞7キロ」

 高速に乗って渋滞にハマる……。頭から爪先まで新しく一揃えのファッションを買って、翌日全裸で出かけるようなものである。この頃にはすっかり日も落ちて、すっかり夜モード。どーにかこーにか名塩SAに到着した僕らは、少しの間休んで渋滞をやり過ごすことに。

 日が落ちてから急速に気温が下がっているのだろう、高速でなくて下道でも十分寒くなってきていたので、僕らは迷わずラーメンを注文。

(僕はコロッケカレーも追加)

 Tちゃんは池田から阪神高速に乗り換えて大阪市内へ。そして僕は吹田から近畿道~阪和道と乗り継いで帰ることとしたので、Tちゃんとはここでお別れ。お互いの無事の帰宅を祈りつつの解散となった。

 今回は四郎号2度目の日本海だったわけだが、それにしてもやはり天橋立は何度見てもすばらしい。毎日だったら飽きるだろうけど。

(おしまい)