rider notes

BC-ZR750C乗りの残しておきたいログ

淡路國攻略戦|2.海ノ幸ヲ制覇セヨ!

刺客との戦い

 さて、Tちゃんの暴言にも屈せず、僕たちはなんなくエレベーターから無事地上へ帰還。第一目標である淡路國の制空権は完全に我々のものとなった。

 Tちゃんは、どこから仕入れた情報なのかはしらないが、「淡路國随一の走り屋スポット」なる極秘情報を入手していた。

Tルーティング部隊長「この妙見山を越えるルートが淡路國では最もホットなランニング・ラインとのこと!」
bar連合軍最高司令官「よし! 制空権を握った我々に怖いものは何もない!」
Tちゃん「おー!!!!!」

 と、まぁとりあえずR28を再び南下。先ほどとは違い、今度は左手に一面の海を眺めながらのライディングである。太陽も少しずつ顔をほころばせつつあり、まだ暑いというには早い中、僕たち大阪連合軍は快適に佐野地区を目指した。ツーリングマップルによるとR28を一旦旧道に入り、そこから県道157号に入れば、淡路國随一の走り屋ラインである。

 が、早速道に迷う。淡路國ごときで道に迷うとは…侮れん。近くに車をとめてごそごそしていたおばちゃんをつかまえる。

「おばちゃんおばちゃん。この島一番の走り屋スポットの県道157号を存分に走りたいんやけど」

 とは口が裂けても言えなさそうなほどおだやかな雰囲気の御婦人だった。そこで、「あのぅ、すみませんが、ここから県道157号線に出たいんですけどぉ…」と礼儀正しく尋ねてみた。すると案の定、

おばちゃん「八浄寺さんから入る道やったら、あそこの道を戻って、一つ目の四つ角に八浄寺さんの看板が…………」
bar「あれ? どーかしましたか?」
おばちゃん「ところでなんでこんなに遠回りな道で行かれるんですか?」
bar「は?」
おばちゃん「こんな山道を通るなんで危ない。あそこの道に戻って真っ直ぐ行くと、国道にそのまま合流できますから……」
bar「いえ、僕たちは……」
おばちゃん「いいから、国号28号線で行きなさい

 …怒られた。

bar「いや、その…、あの…」
おばちゃん「いいですか。真っ直ぐに行ける道があるのに、どうしてわざわざ曲がりくねった道なんです?」
bar「いや、だから、それは……」
おばちゃん「おかしいでしょ? そうでしょ?」
bar「……は、はぁ…」

 実をいうとツーリングマップルを見せながら道を尋ねていたのだが、おばちゃんに怒られながら見ていると、曲がるところを間違えたことに自分で気づいたので、本当は途中からはどーでもよくなった(ごめりんこ)。だからといってこちらから尋ねておいて途中で「もういいです」と話を切り上げるわけにもいかず、僕はただ叱られていたというわけだ。

 道順がわかれば話は早い。道を尋ねただけでなぜ叱られなければならないのかという疑問はこの際いいとして、僕たちは一路、県道157号線に向けて道を辿った。

 ところが県道157号線に入った途端、目に入った看板。

がちょーん

 これも、あのおばちゃんパワーのなせるワザなのか…。僕たちは淡路軍の放った刺客の策略にハマりつつあるのを感じながら、やむなくR28号に乗って素直に東浦町に向かった。

あさじ

 次の攻撃目標は、淡路國一の炭焼きアナゴを饗する店「あさじ」。

 なんだかよくわからないうちにモノゴトが好転することを、最近では日本代表の有様から「ジーコ力(りょく)」と呼ぶらしいが、淡路軍の思わぬ「おばちゃん力」(こちらはたいして好転しないのだが)にまんまとしてやられた大阪連合軍の最高司令官であるbarちゃんは、やや懐疑的になっていた。

bar「ところでTちゃん」
Tちゃん「はい。なんでしょう」
bar「お店の名前、間違ってない?」
Tちゃん「いえ。炭焼きあなごのあさじ、で間違いありませんデス!」
bar「どーもクサいな」
Tちゃん「あ、臭いました?」
bar「は?」
Tちゃん「たった今、すかしてしまいまして…。風向きは考えたつもりですが…」
bar「いや…そうでなくて…」
Tちゃん「ウソですよ。でも、いったい何を疑問に思われると? 最高司令官殿」
bar「『淡路』島にあるのに、お店は『あさじ』なの?」
Tちゃん「間違いないッス! 『るるぶ』に載ってたんですから」
bar「それはもしや、敵の策略では…」
Tちゃん「疑いすぎじゃありませんか?」
bar「何を言う! 刑事の仕事は、まず疑うところから始まるのだぞ!」
Tちゃん「いつから僕たちは刑事に…」

 炭焼きあなごの『あさじ』を目指して、一直線! 行きたかったところだったが、まずは休憩。僕のツーリングマップルには乗っていない道の駅「東浦ターミナルパーク」である。ここで時刻はちょうど午前10時頃だった。

 なぜ次の攻撃地点が決まっておきながら休憩に入ったのか。それは単にアナゴまで我慢できないほどお腹が空いていたからである。

 実は炭焼きアナゴの『あさじ』は、今僕たちがいる東海岸ではなく、西海岸にある。確かに島北部なら十分か二十分で東から西へと行けるのであるが、それも我慢できないほど大阪連合軍の食糧難は深刻だったのだ。いつもならおいしい食事のために、厳戒令ともいえる食事制限を強制するTちゃんではあったが、よっぽど空腹だったらしく珍しく僕のつまみ食いに付き合うこととなった。

 が、10時になったのにいっこうに開けようとしないお店たち。開いているのは1階のお土産物屋さんだけ。さすがにお土産物では腹は膨れん! すると目ざといTちゃんが、

Tちゃん「あ! 2階に灯りのついているお店がありますよ!」
bar「よし! 突撃ぃ~!!!」

 と階段をホフク前進で進んだのだが、その『お店』のドアに書かれていた文字は、「商工会」。僕たちは早々に退散することとした。

 大阪連合軍の食糧危機はなんら解決策を見いだせず、空腹を抱えたまま僕たちは一旦R28を南下。東浦の町中から県道71号で一気に西海岸へ電撃的に急襲しようという作戦を立てた。目指すアナゴちゃんは県道71号が西海岸にぶつかった地点にある。

 県道71号だが、あっという間に西側に着いてしまうものの、と~っても快適な路面。適度なアップダウンとキレイな路面。山中ではちっちゃないくつもの棚田を見ることができる、なかなかゴキゲンなルート! 特に高速道路をくぐって西側の下りになると、瀬戸内海を一望しながら走れます。これはオススメ!

 県道71号は西海岸で淡路高校の横に出る。そこを左折。注意深く県道31号(淡路サンセットライン)を1~2分も走ると、見えました! 『特選 炭焼あなご あさじ』の看板!

 店構えは思ったよりもコギレイながらも、と~ってもちっちゃい。だけど駐車場は5~6台分は余裕でとってある。恐る恐るドアを開けると、ずいぶんと狭い店内。持ち帰りが専門のようだ。

 メニューはというと… 「大穴子2匹1050円」「中穴子3匹1050円」「お持ち帰り用あなご丼735円」の3つだけ。これでお店が成り立っているところがスゴイ。そして、声をかけて暖簾の奥から出てきたおばちゃんを前に、しかも、たった3つのメニューの前にして、どれにしようかと迷う優柔不断な大阪連合軍。結局、それぞれ中穴子を2匹で700円にしてもらい、テイクアウト。僕らは「あさじ」の駐車場で、早速食することに。そしてひと口……。

( ゜д゜)激ウマー!

「アナゴって、もっとぱさぱさしたものしか食ったことないです」

 Tちゃんの言うとおり、ウナギと似ているもののアナゴはどこかしっとり感が明らかに物足りない感じがする。しかし、ここのアナゴはしっとり感を失わずに炭焼きにしている美味しさ。しかも、ここのアナゴは、いわゆるタレがかかっていない! それでぱさぱさしていないし、どこか甘さすら感じるところがスゴすぎる。

Tちゃん「しかし、どうなんでしょう。最高司令官殿」
bar「何? どったの? アナゴの頭の骨でも喉にひっかかった?」
Tちゃん「いや…そうでなくて…」
bar「だったらなんなの?」
Tちゃん「ココですよ。淡路島」
bar「うん。淡路島は兵庫県だよね」
Tちゃん「そんなことは誰でも知ってます」
bar「では、なんだというのだ、参謀総長
Tちゃん「道はなかなかいいし、眺めもいいし、アナゴはうまいし。なかなかの強敵はありませんか?」
bar「……。うむ…」

 確かにTちゃんの言うとおり、淡路國は見くびると被害は甚大になるかもしれない。

 我々大阪連合軍は気持ちも新たに、次の襲撃目標地点へと向かうべく、それぞれの愛鉄馬にまたがり、キーを回してエンジンに火を入れたのである。

(つづく)