rider notes

ZR750 D5乗りの残しておきたいログ

伊勢|2.牡蠣と絶景

いかだ荘 山上

 おかげ横丁にたどり着く手前でTちゃんに無理やり強制送還…じゃなかった、強制的に退去させられた僕は、仕方なくバイク乗り場へ。僕たちよりも先に止まっていたBMWはまだいらっしゃる。

Tちゃん「BMWもいいなーっと思ってるですよねー」

 実はTちゃん、先日から大型二輪の免許を取るために教習所へ通っているので、あっちゃこっちゃのバイクに興味津々。確かにバイクを選んでるうちが一番楽しいかもしれない。

 僕はどこのナンバーかなと思って見ると……なんと大宮! 僕と変わらない30代後半といった感じのライダーさんがちょうど戻ってきたので、少し話をしてみる。埼玉県からの一人旅でもう幾日。今日は伊勢神宮おかげ横丁に来て、今から南に向かうと言う。

bar「ってことは潮岬あたりでまた一泊って感じですね」
ライダーさん「そこまで行けるかな。まだまだ見たいところもあるし」

 確かにここから南を熊野灘沿いに南下すれば、那智勝浦や太地といった観光スポットもある。気をつけてくださいね! そちらもね! と挨拶して、僕たちも安全走行を心がけて出発。

 伊勢神宮から目指す的矢は、県道55号線を南下すればいいのだが、この県道55号線がまた絶品。お昼頃ということもあって天候も良好。寒いことは寒いのだが、それでも予想気温7~8度。小さな谷沿いを辿っているのだが、軽いアップダウンのおかげで日光も見えたり隠れたり。目の前で光が踊ってくれちゃったりしてるみたいでウキウキである。

 爽快に走ってると、いつの間にか道は小さな町にたどり着いた。ちらりと見えたのは駅。ん? ここらで走ってる電車っていったら、近鉄? どこだココ? と思いながらも進むと住宅街。あちゃー。少しだけぐるぐる走ってみたのだが、さっぱりわからん。町の中に戻ってあった郵便局で聞いてみると、やさしいおっちゃんがすぐに教えてくれた。ありがとー! 志摩磯部駅近くにある磯部郵便局のおっちゃん。

 そこからは正直に言うと「海沿いに」ということしかわからず、ひたすら道にある「いかだ荘山上コッチ」という看板だけを頼りに。その一番大きな看板がある急坂を一気に駆け上がると、そこが本日のメインデッシュの待ち構える「いかだ荘 山上」である。

ikadasou.jp

 店構えはとっても立派で清潔感。こりゃすごい穴場だったりして。

 駐車場にバイクを止め、そそくさと支度をしてご入館。仲居さんたちもとっても気さくで親切だった。「何かあっても責任は負いません」みたいなセリフの書かれたメニューを見ながら牡蠣のフルコースを注文する。望むところだ! こちらもそのくらいの覚悟はできてるぜ!

 テーブルにつくと早速4品❤

バター焼き(左上)、土手鍋(右上)南蛮漬け(左下)、おろし(右下)

 僕はいきなりパクつくのもどーか…と圧倒されていただが、ふと正面に座ったTちゃんを見ると……

 もう食ってるし!!!

bar「こーゆー料理っつーのは、もうちょっとこう見た目も楽しんでだねぇ…」
Tちゃん「…は、はふっ?! ふえぇっ?」

 僕も固形燃料に火をつけて料理をいただくことにする。土手鍋も南蛮漬けもおろしもおいしかったのだが、最初の4品でダントツにおいしかったのは、バター焼き! しつこくないていどの味付けが絶品。

Tちゃん「こりゃたまりません!!!」
bar「はふっ!!!」

 そして次に仲居さんが持ってこられたのは……生牡蠣。

 焼き牡蠣! もうほくほく……

 僕たちのボルテージも一気に絶頂へ!!!!!!!!!!

牡蠣蕎麦

牡蠣御飯

 んで、お食事の感想は、「生きててよかった」であった。

 …とまぁ僕たちはあっという間に牡蠣づくし料理を平らげてしまったのだが、今から考えたら、もうちょっとゆっくり味わってもよかったかな。でも、もう食べ始めたら止まらなかったのも事実なのだ。

 食事する座敷は禁煙ということだったので、ロビーにタバコを吸いにいったTちゃんが帰ってきて、

Tちゃん「ロビーから絶景が見えますよ」

 というので僕も行ってみた。

 ここにたどり着く直前の急坂で納得もできるのだが、まさに的矢の高台に位置する「いかだ荘 山上」。景色までもが絶品だった。タバコの煙をくゆらせながら、しばし的矢湾の景色を眺望。

 座敷に戻ってみると、Tちゃん寝てるし!

bar「おい! 起きろ!」
Tちゃん「…は、はふっ?! ふえぇっ?

 食べてすぐ寝る…まるで乳児である。

 となりのテーブルを片付けに来られた仲居さんにお話をうかがうと、最近ずっとお風呂を修理工事していたのだが、露天風呂はまだムリであるものの、今日から内湯は入れるとのことだった。恐る恐る入湯料を聞いてみると、

仲居さん「そんなぁ。お食事いただいた方から、お風呂でお金はとれませんよ」
二人「マジすか?!」

 というわけで内湯ながらも的矢湾の絶景を眺めながらのお湯は、それはそれはもうたまりましぇん。ふたりとも「ほげー」となっていたことは言うまでありません。

 風呂あがりにまたロビーでゆったりしていたら3時を知らせる時計の鐘の音。

bar「もう3時か」
Tちゃん「そろそろ行きますか」

 僕たちは「いかだ荘 山上」の仲居さんたちにお礼を述べて、再び鉄馬上の人となったのである。

 とかっちょいい書き方をしたところでなんだが、実は志摩磯部(さっきの郵便局あたり)からココまでの道はさっぱりわからん。だって「いかだ荘 山上」という看板しか見てなかったんだもん。一つ目の交差点でいきなりわけのわからん標識。ツーリングマップルを見ると直進といったところか…と出発しようとしたら、通りかかりのオジイが声をかけてくれた。

オジイ「どこに行くんよ?」
bar「あ。とりあえずパールロードで鳥羽に行きたいんです」
オジイ「鳥羽か。それならこれを左折や」
Tちゃん「えっ? 直進と違うんですか?」
オジイ「パールロードやろ? 左から行ったらすぐ乗れるで。真っ直ぐ行ったらちょっと距離があるわ」
bar「ホンマですか! ありがとうございます!」

パールロード

 そしたら、ホントにすぐパールロードだった。パールロードは僕たちが乗った的矢から鳥羽までの北部が一昨年に無料開放。有料だっただけに、路面がすばらしい。無料になってから走るのは初めてだったので、僕は「無料」を堪能するように軽快に流していった。途中にあった休憩ポイントでTちゃんも、「サイコーですねー」とご満悦。

 青空の下、太平洋を遠望できるポイントとしては、鳥羽展望台もあるので、僕たちも定番に従うことにするものの、

Tちゃん「なんか寒くなってきてません?」
bar「オレもさっきから感じてた」
Tちゃん「もう3時半すぎてるでしょ。早く帰ったほうがいいかもしれませんねぇ」

極寒との戦い

 超極寒ツーリングは時間との勝負でもある。パールロードもいつの間にか終わり、下道に下りた途端にのろのろ大型バスが前に。あのぅ……時速30キロなんですが……。

 鳥羽市内でガソリン給油後コンビニへ。

Tちゃん「あのバスには参りましたね…。寒くなってきたのに眠くなってきました」

 ということで、ミキモト真珠島近鉄鳥羽駅をパス。二見が浦の手前で、伊勢二見鳥羽スカイラインから伊勢道へ。帰りはバビューンと高速で帰ろうという計画だ。 …とはいえ、やはり寒くなってきたのがよくわかる。鳥羽のコンビニから約30分後、先頭を走っていたTちゃんはたまらず多気PAに突入。そしてまた、その40分後、今度は安濃SAに突入。往路と同じようなペースになってきた。寒くてそれ以上走っていられない。

多気PA

安濃SA

「それにしてもさぶいッスね…」と、Tちゃんはもはや凍死寸前状態。

bar「こんなところでその状態じゃぁ、この先もっと辛くなるぞ~ぉ」
Tちゃん「言ってみただけです。今日は僕は新しいことにチャレンジする日なんです」
bar「は?」

 とうとう寒さで頭の中までやられかけているTちゃん。

 とりあえず無料お茶コーナーで燃えるような熱さのお茶を軽く4杯ずつ飲み干してから、またスタート。安濃SAから関JCTは近く、そこからは名阪国道。往路にマイナスを記録し、雪まで降ってきた難所。さすがにこの頃には辺りも真っ暗になって、よけいに寒さを感じさせる。僕はTちゃんから借りたウインターグローブのおかげでなんとか手がかじかむことはなくなったのだが、いかんせんヘルメットの中には超冷風が渦巻いてさぶいさぶい! もうあかん! とばかりに、僕たちは往路にも立ち寄った針T.R.S(道の駅)に入る。ここで午後7時15分。

Tちゃん「いやー、計画とはほど遠くなっちゃいましたね」

 僕たちはできれば7時過ぎには解散(香芝SA)しようと目論んでいたのだ。

 あまりの空腹に僕たちは軽食をとることにした。僕は体をあっためるためにカレーうどん。Tちゃんもやっぱりうどん。はふはふ…とカレーうどんをすすっていた僕がふと正面のTちゃんを見ると、何やらケータイをいじりながらうどんを食ってる。

bar「ん? メールか何か?」
Tちゃん「違います。今日の僕を見てるんです」
bar「さっきの『新しいことにチャレンジする日』発言といい、寒さで頭がどーにかなってしもたんか?」
Tちゃん「いや、それがですねぇ」
bar「どしたん?」
Tちゃん「実は最近、細木数子にハマってまして」
bar「細木数子?」
Tちゃん「占いです」

 何気なく見た細木数子六星占術で、去年の自分の大不幸ぶりをモノの見事にぶち当てられていたことを知ったTちゃん。それ以来すっかり細木数子様にハマっているらしい。大学時代のツレにも六星占術の本を毎年買って持ち歩いていたヤツがいたから名前は知っていたものの、それ以上はあまり詳しくない。最近テレビにもよく出てるらしいのは知ってるけど、テレビもあんまし見てないし。

Tちゃん「今日の僕は新しいことにチャレンジするといいことがあるらしいです」
bar「はは~ん。それでさっき言うてたわけね」
Tちゃん「そうなんです。今日は新しいことにチャレンジすると、何か得るものがあるらしいです」
bar「こんなにさぶい思いをして、何を得られるっちゅーねん…」
Tちゃん「まぁまぁ」

 とか何とか言いつつも、先を急ぐために名阪国道を急ぐTちゃん&bar。もうすっかり真っ暗闇の高速(やがて西名阪道に入ります)では、バトルですか? と思うほど、みなさんぶんぶん飛ばしてらっしゃる。暗くなったら白バイは店じまいするものの、覆面様のいらっしゃる可能性がある。現に反対車線で一台御用になってたぞ。

 ってことで僕たちは極めて理性的な速度で巡航~。申し合わせていた最終休憩ポイント・香芝SAに着いたのは、もう午後8時を回っていた。

bar「げっ。もう8時回ってるよ」
Tちゃん「…ホンマですねぇ…。僕はこのままココで死ぬまで休みたいです…」

 Tちゃん、ホントにこんな超極寒ツーリングで、何かを得ることができたんですか? 僕も何かを得ることができたのだろうか…。

 あ! そういえば、得るモノはあった。それは……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 Tちゃんの冬用グローブ♪ 借りたまま帰っちゃった♪ また春になったら返すねー。

(おしまい)