RIDER NOTES

BC-ZR750C乗りの残しておきたいログ

信州|4.本日のお宿

目指すお宿

 見知らぬタウンエースのおっちゃんに思わぬご親切を受けた僕は、そこから始まる美ヶ原林道へ。ま、「林道」とはいえ、そこはちゃんと舗装されてます(というかこの天気で四郎号にオフロードは走れません)。道じたいはクネクネのヘアピンカーブが次々と続きながら、標高の一気に下がっていくのがわかる。今まで走ってきたビーナスラインから美ヶ原にかけてが、いかに空に近かったかのかがよくわかる。過ぎ去って実感することは、よくあることだ。

 やがて水を満々とたたえる小さな湖が見えてくる。そこが美鈴湖である。そのすぐ脇に、「美鈴湖キャンプ場」という看板を発見。ん? 確か目指してたのは美鈴湖もりの国キャンプ場やったよなぁ……としばしその看板の前で止まって呆然としてしまった。

 そこをやり過ごし、先に進むが、目指すキャンプ場がいっこうに見つからず、一旦美鈴湖を通り過ぎてしまい、あやうく松本市街へと出てしまおうとするところでようやく案内看板を発見。

misuzuko.net

 なんていうドンクサイことをしつつも美鈴湖へまた戻り、ようやくキャンプ場への入口へ。四郎号を止めて下りたときに強烈な疲れを感じる。たかが一日走っただけで(しかも夕方までしか走ってないのに)、こんなに疲れてるなんて….と我ながら驚きつつ管理棟に入り、飛び込みであることを伝え、バイク用のサイトはあるかと恐る恐る尋ねてみると、管理人のおっちゃんはこれまたとっても笑顔の爽やかな優しい方で、

「バイク用のサイトもありますよ」

 とにっこり。

「今日はバイクサイトには一台もいらっしゃいません」

 ここがダメなら松本市街地へ出て素泊まりのできる宿を探すつもりだったので、松本市街まで5キロ足らずの距離とはいえ肉体的には助かった~ぁ。もちろん金銭的にも大助かり。

 料金は税込みで1000円。説明を聞くと、ごみも翌朝であれば分別して出せる(おまけにごみ袋もくれる)し、もちろん炊事塔あり、管理別塔のトイレは水洗だし、シャワーもあって使い放題。おまけに「今日はファミリーサイトにたくさんいらっしゃいますけど、奥の方には一組いらっしゃるだけです。バイクサイトも4つあるんですけど、やっぱり狭いですから、その前にある区画サイトに張っていただいて結構ですよ」

(確かに狭いバイクサイト)

(その目の前にあった区画サイト)

 これで1000円やったら言うことないっしょ。おまけによく見たら区画サイトには電源も確保されてるやん(とはいえ何も使うものはないけど)。

 話は少し戻るが、手続きを済ませ説明を聞き終わったところで管理人のおっちゃんに、温泉に入りに行かれるんなら割引券がありますよ、とのことだったので詳しく尋ねてみると、ふもとにある浅間温泉の「ホットプラザ浅間」というところが、通常入浴料800円のところ、520円で入れる割引券とのこと。ここから10分程度のところらしい。

 今日一日、昼前からは特にずっと山岳スカイラインばかりを走ってきたからか、たかが一泊するだけのツーリングにしては猛烈な疲れを感じていたこともあって、即飛びついてしまった。しかし800円が520円になるなんて、元の値段はいったんナンなんやろという疑問も浮かばなくもないが、これは日頃の善行の賜物であると自分に言い聞かせることも、旅では許されることだろう。

ホットプラザ浅間

 とっととテントを張り終え、タオルやら着替えだけを四郎号のタンデムシートにくくりつけ、早速浅間温泉へと繰り出してみた。

 おっちゃんに教えてもらったとおりに道を下っていくと、ホットプラザ浅間は駐車場もちゃんと完備されている。建物の隣はステージなんかも備え付けられている広場になっていて、ずらりとパイプ椅子が並べられ、それを取り囲むように露店も出ている。

 焼とうもろこしの甘そ~な匂いが鼻をつくが、とにもかくにも温泉につからねばどーにもならん、というほど疲れがどっと出ていた僕は、そそくさとホットプラザ浅間へ。

 正面に回ると、これまたご立派な…。看板を見ると、ホットプラザ浅間は正式には「浅間温泉会館」というらしく、城と町並みを誇る松本市にふさわしい重厚な民芸調になっている。肝心の温泉はというと……….生き返りました(いや、マジで)。

 温泉じたいに入るのが久しぶりだったということもあったんやと思うんですが、それも魔都で単身暮らすようになってからというもの「風呂だけでも十分癒されるやん」と感じてたから。つまり、「温泉なんてわざわざ金払ってまで入る必要もないかも」という温泉不要論者になりかけていたところだったのだ。 しかし、フツーのやらぶくぶくのやら露天やらの数種類の温泉に繰り返し繰り返し出たり入ったりしているうちに、なんだかいつの間にか疲れもとれていくのがわかった。温泉、万歳。最近はすっかり温泉の存在意義すら見失いかけていた僕ではあるが、真の男は素直に認める度量の大きさもある。

 たっぷりと1時間近く温泉につかり、すっかりふにゃふにゃになった僕は、洗った髪を乾かすため(濡れたままヘルメットをかぶるのが好きではないので)もあり、まだ明るいこともあって、さっきちらりと見た広場の方に行ってみた。

 ステージには太鼓がたくさん並べられ、椅子にはすでにたくさんのおっちゃん、おばちゃんたち。立ち見の方たちもけっこういる。やがて一人のスーツ姿のおっちゃんがマイクを持って出てきて、集まってくれたお礼と、今から太鼓を演奏するらしい少年少女たちの紹介をしていた。

 それから小学生~中学生たちの太鼓の見事な演奏会のスタート。僕はひと通り露店を冷やかし、とある露店でフライドポテト(小)を買って、それを食べながら太鼓の演奏をしばらく聞いていた。近所の方たちなのだろうか、少しずつ人も増えてきて、思ったよりも賑やかになってきた。

 太鼓の音は、薄暮の空に大きく響き渡る。ほんの少しだけ、夏祭りのような雰囲気を味わえて、僕はちょっとだけ満足げになった。髪もすっかり乾いたので、キャンプ場に戻ることにした。

夕餉

 さて、ホットプラザ浅間を出たときにはまだ日は残っていたのだが、キャンプ場に着く頃にはあっというまに陽は落ちてきていた。ぼちぼち夕食の支度。今日は昼メシをカットしてまでビーナスラインを堪能してしまったので、すっかり腹が減ってきた。そして、僕のツーレポをよくご覧いただいている勘のよい方々には、もうとっくにバレているとは思うのだが、一応今晩の宴のもようをご覧いただこうと思う。

 非常食用のアルファ米(左)、外で食えばなぜか美味く感じるレトルト親子丼(右手前)、そしてインスタントのお吸い物(右手中央)。全部お湯を沸かしさえすれば済むという必殺キャンプメシ。断っておくが、決して料理がメンドクサイわけではない。「漢」は一人では贅沢を言わないものだ。これで十分なのである。しかしながらメシが済むと、ソロキャンプだとやることがなくなる。時計を見ると、まだ8時にもなっていないし、さすがにまだ眠くもない。

 というわけで、真っ暗になったキャンプ場を徘徊してみることにする。まずは遠くで聞こえる楽しそうなファミリーキャンパーたちが集うサイトの方に行ってみるが、ヘッドライト一つで真っ暗闇をうろうろするおっさんの姿を見て、かわいい子供たちが泣き出しても悪い。「漢」は心優しいものである。しかたがないので自分のサイトに戻ろうとすると、木々の隙間から松本の市街地の夜景が見え隠れしていた。

 今回は後片付けを考えるとめんどくさかったこともあって焚き火はせず。電池の切れかかったヘッドライトの頼りなげな丸い明かりでツーリングマップルを見たり、キャンプ場を囲む林の向こうから聞こえる風が木の葉を鳴らす微かな心地よい音を聞いたりしているうちに、少し眠気を感じたので、早々にテントに潜り込むことにした。

 と、ここで今回は、テントの内部をご紹介しましょう。もちろんこれは突然思いついた企画である。 僕のテントは一応2人用ということになっているので、半分に銀マットとシュラフを広げて寝床とし、あとの半分に荷物を置くようにしている。

 そうこうしているうちに猛烈に睡魔が僕を襲ってき、時計を見るとまだ9時前。だというのに、温泉に入ってからずっとぬくもったままの体もあり、すっかりぐだぐだ。早々にシュラフに入り、もぞもぞとしているうちにいつの間にか眠ってしまっていたのだった。

(つづく)