rider notes

BC-ZR750C乗りの残しておきたいログ

南総|1.久留里城

 その週末、天気予報では、「金曜・雨、土曜・雨→曇り、日曜・晴れ」とのことだったのだが、前日(金曜)になって急遽、土日ともに晴れ。しかも夏日。こりゃどっかにキャンプにいっちゃろ~、と思うと、仕事なんざぁ手につくわけがない。というか、いつもなのだが。

 土曜日は珍しく6時に起床。キャンプ道具は前夜に用意していたので、顔をざぶざぶ洗ってそのまま出発。行き先は……先々週同様、房総半島である。

 というのも、こないだ行ったのは銚子と佐原。つまり「房総半島」とは名ばかりのツーリングだった。前回を「北総」と位置づけるならば、今回は南を目指してやろうぢゃないかというわけである。

 房総の南は、「南総」になるわけだが、「南総」といえば「南総里見八犬伝」。近世の滝沢(曲亭)馬琴の名著で、上田秋成の「雨月物語」と並ぶ、近世屈指の戯作。

 今回は「南総里見八犬伝」にも出てくる里見家の久留里城を目指しての出発である。房総に向かうためには前回同様、魔都内をパスし、そしてトラックやダンプがうじゃうじゃしている湾岸道路もスルーせねばならんが、出発した時間が前回より約2時間も早かった(前回は8時半過ぎ出発)こともあり、魔都内はサラリとスルー…… と思ったら大まちがい。魔都内はすでにどこから湧いてきたのかというほどの人ですでに賑わってました。湾岸道路(R357)は渋滞する区域と、バビューンと走れる区間が交互にやってくるのだが、今回は数年ぶりにピカピカのタンクローリーの後ろについてしばらく走ってみたりした。タンクローリーの後ろの丸い凸に写る自分を見ながら走るのは、ナルシストっぽいけどなかなかいいもんだ。

 湾岸道路もR14と分岐する辺りを越えるとひと段落。そこに見えてきたコンビニで早めの休憩とすることに。ここで朝めしのパンと、昼めしのおにぎりをゲット。

(しかし暑い。さすが夏日予想)

 買った昼めし用のおにぎりにはちゃんとした目的がある。それは「眺めのいいところで食う(今日は暑いのでできれば風があると尚良し)」。その第一目標地点が久留里城なのだ。

 さて、R357を再び走り出し、市原市に入ってしばらくすると、「←久留里はコッチ」の青看板が見えるので、そこを左折。そこには「久留里街道」という案内標識もある。

 実は久留里に向かう県道24号線ばかりが頭に入っていて、看板にあった「←久留里コッチ 県道13号線よん」という案内に、こりゃ違う道だわと思い、一度通り過ぎてしまった。県道13号線から看板にしたがうとすぐに県道24号線になり、それまでの工場とひたすら真っ直ぐなだけのR357とはまるで違い、そこはもう「さすが、チバ!!!」という光景が当たり一面に。

 右を見ても左を見ても山の緑と空の青しかない。

 館山道を越えて南下し、やがて道はR410に入るが、そこは小さな集落をつなぐ細い田舎道。しかし県道24号線もR410も、車はいるものの、信号も少なくてなかなかの快走路。君津青葉高校を越えると久留里の街に突入~。全国津々浦々まで放浪したことのあるbarちゃんではあったが、久留里の町の記憶はまるでない。

 R410から曲がって正面にあるのが久留里駅。この時点ではまだ10時半にもなっていないのだが、すでに夏日です。汗だらだら。

 おそろしく静かな駅の待合室にあったラックから「駅からマップ」をゲットし、作戦(町の回り方)を立てる。本日の攻略目標地点である久留里城を回るとすると、湧き水を汲むのが後回しになってしまう可能性が大きい。久留里の水をあてにして、さっきのコンビニで昼めし用の飲み物を買っていないノダ。

 久留里の水といえば全国でも有名で、町の至るところで自噴井戸と呼ばれる水汲み場がある。しかし、ここは初志貫徹。久留里城攻略ぢゃ。

 しかし、この暑さには……。駅でジュースを飲みながら(飲んどるがな)、ふと駅のホームを見ると、向こうの緑の景色と、誰もいないホームの様子は…… これでセミでも鳴いてたら、もう夏だよ。

 でもええなぁ…。こういう風景を毎日見てたら飽きるんやろうけど、魔都にて汚れた僕にはほんまに清涼剤です。

 さて、久留里の銘水を諦めた僕は、駅で手に入れた宝の地図、もとい「駅からマップ」で久留里城への道順を頭にたたき込んで裏道に入ってしばらく行くと、すぐにありました駐車場。

 駐車場も記憶にはまるでなく、ここでホントに思った。俺って、ほんまに来たことあるんか?

 でもね、ほんまに来たことはあるんです。坂道をひたすらずーっと上って行ったら、ごっつい山の景色が眺められる……はず。これでしょぼ~い景色やったりしたら、ここで「いい景色を見ながら昼めしを食う」という本日の目標が早くも崩れ去ってしまう。 ってゆーか、ここまでわざわざ来た意味がない。

 ここまで来てものすごく不安な気持ちを抱え、買ったおにぎりをウエストバッグに放り込み、案内看板にしたがって、祈るような気持ちで駐車場の奥から始まる道を辿ると、目の前には長~く先まで続く気の遠くなりそうな広い坂道がのびている。

 やっぱり記憶は正しかった。自分の記憶に確信をもった僕は、だ~れもいない坂道をてくてくてくてくてくてくてくてくてくてくてくてくてくてくてくてく…..という頃に見えてくるのが、二の丸跡に建てられた資料館。「天守閣に行かれる前にご覧ください」という看板に素直な僕は従い、資料館(入館無料)に入ってみた。

 そして再び、天守閣を目指して、残り150mをえっちらおっちら進むのである! おいしい昼めしを目指して! そして緩やかな階段を上ると、やってまいりました久留里城天守閣。

 もちろん、だ~~~~れもおりません。スリッパに履き替えて、味気のないコンクリートの壁の内部中央にある階段を上ると、そこには絶景が待っておりました。

 しかもおまけ程度に考えていた風もビュービュー吹いていて、汗も一気にひいていく。しばらく山と空の眺めを堪能してから、バッグの中からおにぎりを出して、ゆっくりと昼めし。

 んん~。コンビニのおにぎりでも、こんなシチュエーションなだけで、激ウマ。お城の天守閣で昼めし食うなんて、めったにできるもんと違います。

 結局食い終わっても尚、誰も来る気配のないまま時間が過ぎ、緑と青と風を満喫した僕は下山することに。しかし下山していても汗が吹き出てくる。水もろくに飲んでないのに、なぜにこんなに汗が出る?

 食堂みたいなところでおしっこを済ませ、出ようとすると、一人のおばちゃんが荷物を運んできたところだった。ついでだったので、手にした「駅からマップ」を見せつつ、自噴井戸について聞いてみた。

bar「この雨城庵の井戸っていうのは、すぐわかります?」
おばちゃん「どれどれ…….。あー、すぐわかるよ~」
bar「あ、そうですか。ありがとうございます~」
おばちゃん「水、汲みに行くの?」
bar「はい。久留里の水はおいしいって聞きましたんで」
おばちゃん「そうねー。ここらへんの水はホントにおいしいよー」
bar「有名ですもんね」
おばちゃん「でも水汲むなら、そこ以外にもあっちこっちにあるから」
bar「そうなんですか?」
おばちゃん「うん。必ず誰かが、ほら、こ~んなでっかいポリタンクにいくつも汲んでるから」
bar「そうなんッスか」
おばちゃん「だから、すぐにわかるよ」

 とのことだったので、再び駐車場に戻り、今度は自噴井戸で銘水をゲットするべく、レッツゴー!!! なのである。

 ところがR410沿いの見当をつけたあたりにゃまったく見当たらん。国道からちょいと入らなあかんのかもしれんけど、案内の看板も見当たらん。汲んでる人(もしくは汲もうとしている人)すらもおらん。むむむ……

(つづく)