ノクターンブルーの憂鬱

I remain unaltered by no ride on BC-ZR750C D5.

左手は憶えている

 少しだけ時間が空いたので、紀の川フルーツラインへ。

 展望が開け、風が心地よく吹き抜ける道。数台のバイクが、軽やかにすれ違っていく。

 股の下から全身に響くメカノイズ。エンジンの爆ぜる熱気。グローブ越しに伝わる、車体の確かな重み。

 それらは、もう消えてしまった。なのに、いまだに左手がふわりと浮き、無意識にピースサインを出しそうになる。

 紀の川沿いは、いつのまにか梅の花がほころび始めていた。