夕やけこやけライン
下灘駅から、実は弓削神社という山の中にある神社に寄ってから内子町に出たかったのだが、R378ですらGSがない四国のわけのわからない山深い県道にGSがあるわけがない。
ここは弓削神社はすっぱりと諦め給油を優先。四国では「2軒めに見えたGSで給油せよ」という先哲の教えが仇となった格好だがやむを得まい。これからは「GSが見えたら給油せよ」という新しい教訓に書き換えることとして、先ほどR56からの分岐で見えたGSに寄り、高速に乗って内子町を目指すことにした。
弓削神社をすっぱり諦められたもう一つの理由は、GSでは恨めしくも裏切ってくれたR378が路面と景色では大昔の記憶を遥かに凌ぐスーパー快走路だったからだ。
快走路の定義としてたいていのオンロードライダーなら、
1. 交通量が(ほぼ)ない
2. 路面がきちんと整備されている
3. 適度なアップダウンやカーブがある
4. 絶景
あたりを挙げると思うのだが、この夕やけこやけラインはアップダウンはないものの、まさに快走路。名前のとおり夕刻に走れたらボルテージもMaxにブチ上がろうというものなのだろうが、これだけ揃っていたら贅沢は言うまい。
内子の町並み
R56に入ってすぐのGSで「さっきスルーしなければよかった」という軽い後悔を感じつつ四郎号を満腹にし、伊予ICから内子五十崎ICの一区間だけ松山道でワープ。看板を頼りに内子町並観光駐車場に到着すると、係員のおいちゃんから、
「バイクは無料でええけん。向こうの観光バス用の駐車場の奥に止めてな」
との愛あるお言葉。地図ももらい、内子の町並みをそぞろ歩くとする。
古くはお遍路さんの中継地として栄えたこの八日市護国一帯は、近代にかけて木蝋(もくろう)の生産地として最盛期には約30%という恐るべき全国シェアを誇っていたとのこと。ちなみに「シェア約30%」がどんなもんかというと、トヨタの国内販売シェアが33%(2021年度)だから、30%ってすごい。
しかし、化石燃料に取って代わられる、いわゆる燃料革命で木蝋生産は衰微していったものの、四国では初めて、1982(昭和57年)に重要伝統的建造物群保存地区(重伝建)に選定されたという由緒正しい町だ。(wikiの受け売り)
しかも僕がすげーなと素直に思えるのは、この町並みの中でフツーに地元の方が生活をしているということ。
そして、この通りのすぐ横に小学校も中学校もあって、怪しげな格好の僕にでも「こんにちはー」って元気に挨拶をしてくれるところだ。
ちなみに身も知らぬ人間に挨拶をするのは防犯対策としての機能も持つ。どかーん。
観光客もまばらな中、保存地区をの~んびり歩いて駐車場に戻ってもやっぱり四郎号ぽつん。
こんだけ空いてたら四郎号にも町並みを見せてやれるかなと思い突撃。
平日バンザイ。
途中で「←森文旭館コッチ」という看板を見つけたので細い路地のような道を曲がってみると、内子の「伝統的」な町並みとは明らかに異質な洋風の映画館チックなところが見えてきた。
大正時代に町の有志たちが出資し合って開館したが、テレビの普及と娯楽の多様化に伴って1968(昭和43)年に閉館。最後に上演されたのは「黒部の太陽」。石原裕次郎だな。
張り出されたポスターを冷やかしてふと気づいたら、二匹のにゃんこが寛ぎ中だった。
何撮ってんだ俺。
(つづく)